キタサンブラックを訪ねて~社台スタリオンステーション
能登半島地震に始まり、日本航空機の衝突炎上事故。そして全国からは大規模な火災が相次ぐなど、2024年は年明けから目を耳を覆いたくなるニュースが飛び込んでくる。かつてといってもわずか5年と少々前。北海道胆振東部地震の際には馬産地全体が大きな打撃を受けた。今回の大規模地震は決して他人事ではなく、亡くなった方々のご冥福を心からお祈りするとともに被災された方々が1日も早く日常を取り戻せることを心より願いたい。
中山競馬場に鳴り響いた「まつり」。武豊騎手を背に540kgの馬体を躍動させて先頭ゴールインを果たした第62回有馬記念(G1)。その勝利はG1歴代最多タイ(当時)となる7勝目となり、その間にJRA日本中央競馬会で稼ぎ出した賞金は歴代最多となる18億7684万3000円。それは今も破られることない最多記録でもあり、その存在は社会現象にもなった。
そんなキタサンブラックにとって7度目の種付シーズンがスタートしようとしている。昨年末に公示された種付料は24年シーズンでは国内最高額となる2000万円、500万円からスタートした種付料は途中400万円に下がったものの、産駒がデビューするやあっという間に500万円に戻し、2023年の1000万円から一気の倍増となった。“令和のシンデレラボーイ”。キタサンブラックをそんなフレーズで表現する記事を見かけたこともあるが、これは実力でもぎ取った真の評価だ。
「スタッドイン直後はステイヤーのイメージが強かったせいか、配合繁殖牝馬を選ぶ傾向があったようですが、大型馬であるにも関わらず“重さ”をまったく感じさせないしなやかな動きや皮膚感、体質などは祖父サンデーサイレンスとよく似ていると評価いただいていました」と振り返るのは社台スタリオンステーション関係者。「アスリートとしてずば抜けた才能を持っていた馬。それをしっかりと産駒に伝え、ライバルたちに比べて決して多くない産駒の中から次々と活躍馬を出してくれました」と成功に胸をなでおろし「これからは、さらに繁殖牝馬の質が高まってくるから更なる活躍を期待します」と期待に胸を膨らませている。
そんなキタサンブラック最大のセールスポイントはしっかりした体幹とオンオフの切り替えの上手さだという。「現役時代から脚部不安とは縁遠い馬でしたが、まったく狂いがなく健康な四肢の持ち主で、まっすぐ歩きます。不良馬場で行われた天皇賞(秋)(G1)は多くの方が印象に残っているというレースのひとつですが、あのような馬場でもバランスを崩すことなく走り切れたのは体幹がしっかりしているからだと思っています。実際、蹄の減り具合は四肢が均等で、そんなところもサンデーサイレンスと似ています」と話し「普段も、放牧地でもあまり無駄な動きはしません。扱いやすいのは母の父にはいるサクラバクシンオーの影響かもしれません。あの馬もオンオフの切り替えが上手でした」と懐かしむ。
そんなキタサンブラックにとって最大のライバルとなるかもしれないのが、2024年シーズンから同じ社台スタリオンステーションで供用されるイクイノックス。期待の大きさはいきなり父親と同じ2000万円という種付料に設定されたことにも表れている。
「キタサンブラックもまだ12歳ですから、これからは2頭で新しいサイアーラインを築き上げて欲しいと思います。キタサンブラックのような血統は世界中探しても日本だけ。そこから世界へと挑戦できるような馬を次々と送り出すことができれば日本の生産界全体が世界に対して胸を張れることになると思います」と新しい夢を広げている。