馬産地コラム

インティを訪ねて~優駿スタリオンステーション

  • 2023年02月17日
  • 「走ることが大好き」と放牧地を駆け回ることも
    「走ることが大好き」と放牧地を駆け回ることも
  • 供用初年度を迎える
    供用初年度を迎える
  • 強さと柔らかさを兼ね備えた馬だった
    強さと柔らかさを兼ね備えた馬だった
  • 産駒は芝コースでも活躍を期待されている
    産駒は芝コースでも活躍を期待されている
  • 多くの配合申し込みがあり、忙しい春になりそうだ
    多くの配合申し込みがあり、忙しい春になりそうだ

 ハンデキャップ競走だった時代を含め、今年で40回目を迎えるフェブラリーS(G1)の歴史の中でもその名前のとおりに太陽神インティは、強烈な印象を残している1頭だ。3歳春のデビュー戦は調教などで見せる動きなどから15頭の出走経験馬相手に6番人気に支持されたもののレース中に蹄鉄が外れるというアクシデントに見舞われて9着。さすがのインティも裸足のまま不良馬場を走りきることは難しかった。

 初勝利は2か月後の6月。デビュー戦と同じく藤岡康太騎手が手綱を取り、持ち前のスピードでハナを奪ってマイペースに持ち込むと、最後は2着馬を7馬身突き放して悠々とゴールした。このレースをきっかけに「破竹の」と表現したくなるが、2勝目を挙げたあと脚部不安を発症。11か月を棒に振ることになる。復帰したのは4歳7月。そこからは無敵の連勝が始まる。何しろ持ち前のダッシュ力でハナを奪い、マイペースに持ち込むと最後はメンバー最速の末脚を繰り出すのだから後続の馬は手も足も出ない。逃げ馬のイメージが強いインティだが初勝利から5連勝はいずれも推定あがり3ハロンはメンバー最速のものだった。

 重賞初勝利は東海ステークス(G2)。いつものように武豊騎手のリードでハナを奪うと、追いすがるチュウワウィザードを後目に楽々と先頭ゴールイン。勝ちタイムの1分49秒8はレースレコードにもなり、その勢いは舞台がG1となっても止まることなく、堂々と1番人気でフェブラリーS(G1)に優勝。ダート界の頂点に立った。

 その後は逃げ馬の宿命ともいえる厳しいマークにあって自分の競馬をさせてもらえないこともあったが、チャンピオンズC(G1)3着2回など高いレベルをキープし続け、昨年のかしわ記念(Jpn1)を最後に引退。この春から北海道新冠町の優駿スタリオンステーションで種牡馬生活を送ることになった。

 「移動してきたのは昨年の9月です。馬自身、北海道は慣れているので環境の変化などに戸惑うこともなく体調は安定していました」とスタリオンスタッフ。現役時代、武豊騎手に「走ることが大好き」と言わしめた馬は、同スタリオンステーションの放牧地を心地良さそうに走っている。

 奇しくも、同じ2023年から同スタリオンステーションで種牡馬生活をスタートさせるのは現役時代に何度も顔を合わせているチュウワウィザード、そして2020年のフェブラリーS(G1)で一緒に走ったアルクトス、ケイティブレイブだ。

 2月に行われた種牡馬展示会でも目玉の1頭だったインティ。現役時代の管理トレーナーだった野中賢二調教師や同馬を育成、管理していた武田ステーブルの関係者も姿を見せ、愛されていることが感じられた。事務局によれば「引退が報じられてから多くの配合申し込みがあり、初年度から忙しい春になりそうです。試験種付も無事に終わっており、種付けも上手でした。たくさんの期待をいただいているので、その期待に応えてほしいですし、生まれてくる子が楽しみです」とまだ見ぬ子に思いを馳せている。