名は体を表すなどというが、その名前のとおりに電光石火の瞬発力を武器に日本ダービー(G1)、そして天皇賞(秋)(G1)を制したエイシンフラシュ。

 日本ダービー(G1)で自身が記録した上がり3ハロン(推定)32秒7は、いまだに破られることない日本ダービー(G1)出走馬としての最速上がりタイム。このレースでは先に抜け出したのちのジャパンカップ(G1)優勝馬ローズキングダムをあっさりととらえ、そして追いすがる皐月賞馬ヴィクトワールピサを抑え込んだ。

 また、天皇賞(秋)(G1)においては、シルポートが前半1000m57秒3というハイラップで大逃げを打つ中、中団やや後方でレースを進め、を内ラチ沿いから目の覚めるような末脚(推定33秒1)で馬群を切り裂いた。その圧倒的なパフォーマンスと、レース後、スタンド前に戻ったM.デムーロ騎手が天皇皇后両陛下に膝を折って敬意を表するという立ち振る舞いが強く印象に残るレースとなった。

 そんなエイシンフラッシュの通算成績は27戦6勝2着3回3着7回。ラストランを予定していた有馬記念(G1)は右前球節部の捻挫のため出走を回避。有馬記念(G1)翌日の23日に中山競馬場で行われた引退式のあと、北海道安平町の社台スタリオンステーションへと移動。その初年度は200頭を超える繁殖牝馬を集める人気種牡馬として種牡馬生活をスタートさせ、新種牡馬ランキングはJRA、総合(JRA+NAR)ともに4位。決して悪い産駒成績ではなかったのだが、不運だったのは種牡馬としての同期にはロードカナロアやオルフェーヴル、ヘニーヒューズにエスポワールシチーといったのちにチャンピオンサイアー級の馬たちがいたことか。

 2019年シーズンからここレックススタッドに移動して種牡馬生活を送っている。

 「種付けの時はさすがに激しいところを見せますが、普段はおとなしくて扱い易い馬。オンオフの切り替えが上手なタイプ」とスタッフ受けも良いようだ。隣の放牧地にはスノードラゴンがいて、黒と白のコントラストも美しい。

 15歳となった今年は年初にオニャンコポンが京成杯(G3)に優勝。同レース史上初の父子制覇という話題も背中を押して人気が回復。秋シーズンはヴェラアズールが父譲りとも思える末脚で京都大賞典(G2)に勝って、ジャパンカップ(G1)の大舞台へと挑む。

 「いまだにファンの多い馬で、人気の高さは当スタッドでも1、2を争うような存在です。昨年の中山金杯(G3)2着ココロノトウダイもヒシイグアスに迫った内容から、無事にレースを使われていればと思いますし、タマモメイトウやカリオストロのようにスピードを生かして短い距離を得意とする馬もいます。ヴェラアズールやオニャンコポンも頑張ってくれると思いますし、これからデビューする馬もたくさんいます。来年は生まれる産駒がさらに増えると思いますので、応援してくれる人たちの声に応えられるような産駒を期待したいと思います」と事務局からエールが送られている。