キタサンブラックを訪ねて~社台スタリオンステーション
現役時代に活躍した馬が種牡馬としても成功してくれるのは無条件に嬉しい。競馬がブラッドスポーツと呼ばれる所以でもある。それが、現役時代の父親のイメージそのものであれば楽しいし、父親が見せなかった側面を垣間見せてくれるようなら、ワクワクする。
産駒たちの前に立ちはだかろうという父親は高く、厚い壁になっているが「もしかしたら」というような期待を抱かせてくれるのが社台スタリオンステーションで種牡馬生活を送っているキタサンブラックだ。
現役時代は主に逃げ、先行力を武器に通算成績は20戦12勝。菊花賞(G1)に勝ち、天皇賞(春) (G1)2回、(秋)(G1)1回。ほかジャパンカップ(G1)、有馬記念(G1)、大阪杯(G1)に勝つなど長く古馬戦線の王者として活躍。2年連続で年度代表馬に選出されたほか、それらの活躍が認められて2020年にはJRA競馬の殿堂(顕彰馬)入りを果たしている。
また、種牡馬としては初年度産駒イクイノックスが出世レースとして名高い「東京スポーツ杯2歳S(G2)」に勝ち、皐月賞(G1)2着、日本ダービー(G1)2着。そして秋初戦に選んだ天皇賞(秋)(G1)を制して、同レース史上4頭目の親子制覇を達成している。
ほか、初年度産駒ガイアフォースはセントライト記念(G2)に勝って菊花賞(G1)1番人気に。また2世代目産駒ラヴェルが、2歳牝馬にとっての出世レース「アルテミスS(G3)」に勝利するなど来年に楽しみを広げている。こうした産駒たちの活躍に、同スタリオンステーションの徳武英介さんは「キタサンブラック自身は、その現役時代に1800m未満のレースへの出走経験はありませんでしたが、産駒が2歳のマイル重賞に勝っているように産駒は短い距離にも対応してくれていますし、瞬発力を兼ね備えている馬も多い。この馬(キタサンブラック)自身が持っていた高い能力を、さまざまな形で産駒に伝えてくれていると思います」と現状を振り返り「狂いのない歩様や、無駄肉が付きにくい体質など、サンデーサイレンス系の特徴を強くもった馬です。普段、放牧地でもあまり無駄なことはしませんし、テンションが上がりすぎて扱いにくいこともない。種牡馬として、これからの生産界を背負って立ってくれる1頭に育っていって欲しいと思っています」とその期待の大きさを話してくれた。
昨年の新種牡馬ランキングは4位で、11月15日現在のセカンドクロップサイアーランキングは2位。産駒は2歳戦よりも3歳戦、あるいは夏を越して成長を見せるような産駒が多く、おそらくたくさんの人が抱いていたキタサンブラックのイメージそのままに成長を兼ね備えているのが嬉しい。