エイシンヒカリを訪ねて~イーストスタッド
2015年、香港の沙田競馬場で行われた香港カップ(G1)をレコード勝ち。翌年は仏国シャンティイ競馬場のイスパーン賞(G1)を歴史的大差(10馬身)で勝利したエイシンヒカリ。なぜかあまり語られる事がないのだが、このイスパーン賞(G1)の勝利は、日本産、日本調教馬の欧州G1初勝利であり、牝馬限定競走を除けば未だに肩を並べるものすらいない前人未踏の大記録なのである。
3歳4月という遅めのデビューから不敗の5連勝。そのどれもが影をも踏ませぬもので、5連勝の合計着差は17馬身。その圧倒的なスピードとともにエイシンヒカリという名前をファンに強く印象付けたのは最後の直線で外へと張り出し、ゴールでは外ラチ沿いまで行ってしまったアイルランドトロフィーだったと思う。その後エプソムカップ(G3)、毎日王冠(G2)と重賞2連勝。残念ながら国内G1制覇はならなかったが、前述のような記録を打ち立てて2017年から新ひだか町のレックススタッドで種牡馬入りを果たしている。
そんなエイシンヒカリも11歳、6度目のシーズンを終えた。初年度産駒は2018年に産声をあげた現4歳世代。その血統登録数は53頭。2年目シーズンは63頭で、3年目シーズン76頭と順調に産駒数を伸ばしてきたが、多くの種牡馬がそうであるように4年目シーズンは産駒数を落とし、心機一転を図るように5年目シーズンからは浦河町のイーストスタッドへと移動して種牡馬生活を送っている。
レックススタッド繋養時代にも扱った経験があるという佐古田マネージャーは「以前は強情というか、強引に自分を通そうという部分がありましたが、年齢を重ねたことで丸くなったような気がします。もともと、扱いにくい馬ではなかったですが、最近は手を焼かせることも少なくなりました」という。
現役時代の圧倒的なパフォーマンスを思えば、現状はやや不満も残るが、それでも産駒は、岩手競馬を代表する2歳重賞「南部駒賞」を2連勝。また、JRAにおいても初年度産駒エイシンヒテンがローズS(G2)2着で秋華賞(G1)4着。2年目産駒カジュフェイスは未勝利戦、そしてもみじSをいずれも逃げ切りの2連勝。また、この夏は初年度産駒タツリュウオーが函館競馬場で、2年目産駒エイシンスポッターは小倉競馬場でそれぞれ2連勝を記録して、関係者をほっとさせている。エイシンヒカリが国内外で示した能力を考えれば、まだまだ満足できる結果ではないかもしれないが、可能性を残している。
「持っている能力は高いはず。エイシンヒカリ自身が取り逃がした国内G1競走を勝てるような産駒を輩出して欲しいし、またそれだけの仕事ができるはず」と期待されている。