馬産地コラム

メイショウボーラーを訪ねて~イーストスタッド

  • 2022年09月08日
  • 眼光鋭く毛ツヤもピカピカだった
    眼光鋭く毛ツヤもピカピカだった
  • 21歳。若い時と比べたら多少はおとなしくなったものの、いまだに醸し出す雰囲気は迫力がある
    21歳。若い時と比べたら多少はおとなしくなったものの、いまだに醸し出す雰囲気は迫力がある
  • もう間もなく産駒の血統登録数は1000を超える
    もう間もなく産駒の血統登録数は1000を超える
  • 今年も盛岡競馬場からは産駒の重賞制覇のニュースが伝えられてきた
    今年も盛岡競馬場からは産駒の重賞制覇のニュースが伝えられてきた
  • 産駒の通算勝利数は2000を超えている
    産駒の通算勝利数は2000を超えている
  • 種牡馬として15シーズン目を終えた夏
    種牡馬として15シーズン目を終えた夏
  • 隣の放牧地ではしゃぐサングラスをジロリ一喝
    隣の放牧地ではしゃぐサングラスをジロリ一喝

 激動の20世紀が終わり、21世紀初頭の2003年。この年に行われた第23回小倉2歳S(G3)を当時の最大着差(5馬身差)で制したのがメイショウボーラー。この時、はるか後方で行われていた2着争いを制したのが、後にこの年の2歳王者となるコスモサンビームだったこともレースの価値を高めている。小倉2歳ステークス(G3)における最大着差は、のちに桜花賞馬レーヌミノルによって塗り替えられることになるが、今でも歴代2位のものとして記録されている。

 2歳7月のデビュー戦をあっさりと逃げ切ると、フェニックス賞は2番手から抜け出し、小倉2歳S(G3)を挟んで一気の距離延長となったデイリー杯2歳S(G2)まで不敗の4連勝。自慢の快足は、さすがに距離が伸びるとややその輝きを失うことになるが、それでも弥生賞(G2)2着、皐月賞(G1)3着、NHKマイルC(G1)3着。ダイワメジャーやキングカメハメハらと3歳春シーズンの競馬を盛り上げた。

 驚かされたのは4歳時の路線変更だ。ダートに矛先を変えると1200mのガーネットS(G3)でダートのスピード自慢を相手に3馬身差。これで自信をつけると1400mの根岸S(G3)は圧巻の7馬身差。さらにフェブラリーS(G1)は不良馬場とはいえ従来のレコードタイムを一気にコンマ3秒塗り替える1分34秒7で、ダート歴戦の雄たちから顔色を奪った。

 その後6歳秋まで現役を続けたメイショウボーラーは通算29戦7勝2着5回3着3回(海外1戦含む)で引退すると、2008年から生まれ故郷の浦河町にあるイーストスタッドで種牡馬入り。当時はまだ「二刀流」という言葉はなかったけれども、芝ダートを問わない同馬のスピードを求めて多くの繁殖牝馬が集まった。供用初年度から8年連続100頭超の繁殖牝馬に配合。産駒デビュー後の供用5年目には、それらの活躍によってキャリアハイとなる181頭の繁殖牝馬が同馬の血を求めている。

 そして、産駒は初年度産駒が4歳を迎えた2013年から10年連続100勝以上。その中にはJBCスプリント(Jpn1)を勝ち、今年種牡馬としても好スタートを切ったニシケンモノノフやアイビスサマーダッシュ(G3)を上がり推定31秒6の末脚で突き抜けたラインミーティアなどがいる。

 そんなメイショウボーラーも21歳になった。

 事務局のジャパンレースホースエージェンシーでは「まだ現役種牡馬ですから、このような表現は正しくないと思いますが、残した数字以上の功労者だと思います。種付けも上手でタフ。市場での評価も高く、この馬を心の拠り所とした生産者も少なくありません」という。

 以前のように放牧地を走り回ったりすることもなく、隣のサングラスがはしゃいでいてもジロリとにらみを利かせる程度。ファンからの人気も高く、たくさんの見学者が同馬のもとへと足を運ぶので、見知らぬ人にも慣れている。

 「全盛期に比べれば数は少なくなりましたが、来年生まれる子供もいますし、現役産駒を多数残しています。もうひと花も、ふた花も咲かせて欲しいです。幸い、ニシケンモノノフが種牡馬としても成功する兆しを見せていますし、母の父としても地方重賞(2020年金の鞍賞)を制しています。先日、死亡が伝えられたタイキシャトルもイーストスタッドで長く繋養していましたので、この親子の名前が、長く血統表に残ってくれるのは嬉しいです」とエールが送られている。