馬産地コラム

インカンテーションを訪ねて~イーストスタッド

  • 2022年08月05日
  • すでに大種牡馬としての風格を備えつつある
    すでに大種牡馬としての風格を備えつつある
  • 「なんだお前は」とカメラマンをジロリ
    「なんだお前は」とカメラマンをジロリ
  • 「普段は友好的」という言葉どおりにやさしい顔
    「普段は友好的」という言葉どおりにやさしい顔
  • 2023年の種付けシーズンが楽しみな1頭となった
    2023年の種付けシーズンが楽しみな1頭となった
  • 食欲も旺盛で健康だという
    食欲も旺盛で健康だという
  • 放牧地でゴロリとリラックス
    放牧地でゴロリとリラックス
  • 力強い脚取りは現役時代を彷彿させてくれる
    力強い脚取りは現役時代を彷彿させてくれる

 力強い先行力と豊富なキャリアを武器に、2013年のレパードS(G3)を勝ったインカンテーション。この春、浦河町のイーストスタッドで4度目となる種牡馬生活を終えたばかりの12歳馬だが、何やら、種牡馬インカンテーションの周囲が、騒々しくなっている。初年度の血統登録数は26頭と決して多くはないが、7月末現在ですでに15頭がデビュー。レベルが高いことで知られる道営ホッカイドウ競馬では7月の第2週から3週連続でJRA認定フレッシュチャレンジ競走勝ち馬を送り出し、計7頭で延べ9勝。こうした結果を目敏い生産者が見逃すわけもなく、噂が広まっている。

 こうした結果に「産駒から考えれば、十分に評価できる数字だと思います」と、同スタッドの佐古田場長も目尻を下げている。

 「各地の育成牧場ではデビュー前から評判になっていたようで、実は産駒デビュー年となる今年は36頭の牝馬が集まってくれました。これまでのキャリアの中で、最も多い数字です。来年は、もっと忙しくなりそうですが、今年配合いただいた牧場の方々の期待に応えてくれて、嬉しいです」とほっとしている。

 佐古田場長が「普段は人間に対して友好的な面がありますが、スイッチが入ると前向きな部分が出てきます。さすがに6つも重賞競走を勝った馬だと思います」というように放牧地では決してアグレッシヴなタイプではないが、見知らぬ人間を見返ると頭をあげてジロリ。危害を与えるようすなないとわかると、再び草を噛み始める。

 ただし、隣の放牧地にいるのがNAR年度代表馬ハッピースプリントで、ハッピースプリントを挟んで、その向こうにはやはりNAR年度代表馬の新種牡馬サブノジュニアが。現役時代に顔を合わせたこともある3歳違いのこの2頭は、今でもライバル意識を丸出しにまるで競い合うように走り回ることが多いのだが、その時はインカンテーションも負けじと走ることもあるという。

 現役時代は何度も長い休養をはさみながら、その度に不死鳥のように復活して重賞6勝。 抜け出したコパノリッキーにゴール前で並びかけた5歳時のフェブラリーS(G1)も強かったが、ベストパフォーマンスは8歳時のフェブラリーS(G1)か。残り400m地点からR.ムーア騎手騎乗の5歳馬ゴールドドリームと馬体をびっしりと併せての追い比べ。1度は折れそうになった心だったが、ゴール前では盛り返し、最後は交わそうかという脚色だった。結果的にはノンコノユメの急襲を許してしまったが、勝ち馬からクビ+クビの3着。その後、かしわ記念(Jpn1)も3着し、同年秋のチャンピオンズC(G1)を最後に引退するまで長くトップレベルで活躍した。

 「古馬になってから活躍したイメージがあったので、2歳のこの時期からこれほど多くの勝ち馬を出したことは、ある意味で驚きです。距離延びて良さそうなタイプでもありますし、再来年からスタートするというダート三冠路線では目が離せない存在になるかもしれませんね」とは某生産者の話。こうした結果を受けて、来年はJRAからデビューする馬が多くなりそうだという話も聞こえてきており、楽しみが広がっている。