2018年7月22日、この日、気温が40度近くまで上昇した中京競馬場のメイン競走「中京記念(G3)」。4コーナーを11番手で回った1番人気グレーターロンドンは、最後の直線で自慢の瞬発力を如何なく発揮。灼熱のターフを切り裂くように大外から脚を伸ばして1分32秒3のレコードタイムで優勝した。

 それは、5月23日生まれというハンデを背負い、3歳2月のデビューにも関わらず「ダービー候補」と高い評価を受けた同馬の関係者にとっては待ちに待った瞬間だった。しかし、その1戦を最後に脚部不安を発症。現役生活から退き、日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションで種牡馬となっている。他馬を一瞬のうちに置き去りにする瞬発力は、自らの体をも痛めてしまう両刃の刃でもあった。

 グレーターロンドンは父ディープインパクト、母ロンドンブリッジ、母の父ドクターデヴィアスという血統。母は1997年のファンタジーS(G3)優勝馬で、桜花賞(G1)2着。半姉に04年のオークス馬ダイワエルシエーロがいて、甥に17年の菊花賞馬キセキがいる血統だ。

 そんなグレーターロンドンの周囲が騒がしくなってきた。

 ６月29日、園田競馬場でアズグレーターが産駒として初勝利を記録したのに続き、7月3日にはJRA小倉競馬場でロンドンプランが初出走で初勝利。種牡馬グレーターロンドンにとって、産駒のJRAデビュー戦を勝利で飾ってくれた。また、7月13日にはホッカイドウ競馬のJRA認定フレッシュチャレンジ競走においてエムオーチロが勝ちあがるなど、芝でダートで勝利を積み重ねている。

 場長の坂本氏によれば「種付けの際には、母親と一緒に生まれたばかりのグレーターロンドンの仔を連れて来られる方もいらっしゃるのですが、その当時から馬っぷりの良さは感じていました。この馬が現役のときにみせたパフォーマンス、そして血統からスピードは間違いなく伝えてくれると信じていましたが、実際に結果を出してくれると嬉しいです」と白い歯を見せた。

 そんな周囲の喧騒をよそに放牧地でのグレーターロンドンはかなりのマイペース。1日の最初に放牧されたときはひとしきり放牧地を走り回るものの、その後はあまり動くことなく草をかみ続けている。

 フィエールマン、そしてフォーウィールドライブに挟まれた放牧地。そして通路を挟んだ反対側にはラブリーデイがいる。カメラマンの言葉を借りれば「おっとりエリア」。どの馬もオンオフの切り替えが上手なようで、意味なく走り回ったり、動き回ったりはしないようだ。

 「大きなタイトルを持たないままのスタッドインでしたが、G1級の能力は多くの方が認めてくださるところ。今年の種付シーズンは終わりましたが、来年は今年以上に忙しい春になって欲しいし、なると思います」と力強く締めくくってくれた。