シーイズトウショウを訪ねて~新冠橋本牧場
2003年、そして06年のCBC賞(G3)を制し、06年からスタートしたサマースプリントシリーズの初代王者に輝いたシーイズトウショウが繁殖生活から引退。この夏から、十勝で余生を送ることになった。
同馬は、父サクラバクシンオー、母ジェーントウショウ(その父トウショウフリート)という血統。静内町(現在の新ひだか町)のトウショウ牧場で生まれ、現役時代は38戦7勝2着8回3着5回(海外1戦含む)。CBC賞(G2・G3)(2回)ほか函館スプリントS(G3)(2回)、セントウルS(G2)と5つの短距離重賞を制したほか、桜花賞(G1)では三冠牝馬スティルインラブと、牝馬三冠路線ですべて1番人気になったアドマイヤグルーヴの間に割って入る2着と健闘し存在感を示すなど、長く活躍。5億円を超える総賞金を稼ぎだしている。
現役引退後は生まれ故郷のトウショウ牧場で繁殖牝馬となり、函館2歳S(G3)3着ほか6勝を記録した快足トウショウピスト(父ヨハネスブルグ)などを生んだのちノーザンファームへ移動。そこでは名古屋グランプリ(Jpn2)優勝、川崎記念(Jpn1)3着など長距離のダートグレードで活躍したヴェルテックスをジャスタウェイとの間に送り出してファンを驚かせた。
繁殖牝馬として9年連続で出産するなど牧場の期待に応えてきたが、19歳時でフリートオブフット(3歳、父キンシャサノキセキ)を生んだあと、20歳のときに新冠橋本牧場へ移動。22歳となった今年、引退が決められた。
「現役時代も、繁殖牝馬になったあとも頑張ってくれた馬で、ひと言でいえばオーラがある馬でした」というのは橋本さん。
「人に対してはすごく慣れていて扱いやすい馬で、ほかの馬に対して威嚇行動を取るような馬ではなかったですが、ほかの馬から一目置かれているという馬でした。何しろ、ウチでは新入りのシーイズトウショウが近づくと道を開けるような、そんなシーンを何度も目撃しています」と言葉を続けてくれた。
この日は、朝9時からの放牧。放牧前に立ち写真を撮らせていただき、放牧地へ。日高管内でも有数とも思える広大な放牧地を、22歳になったシーイズトウショウがほかの馬と一緒に駆け回りますが「すぐに、あのあたりに戻ってくると思います」と橋本さんが指さす場所にカメラを構えて待っていると、本当にほかの馬を引き連れてシーイズトウショウが戻ってきた。
「普段は1頭でポツンといることが多いのですが、この馬が移動すると遠くにいるほかの馬も一緒に動くのです」。その様子は、本当に群の長そのもの。
「まもなく十勝へ移動する予定です。残念ながら受胎させることはできませんでしたが、健康状態に不安がある馬ではないので、移動先でも元気にしてくれると思います。短い期間ではありますが、縁あって預かることになった馬ですから長生きして欲しい」と優しい目を向けていた。