ストロングリターンを訪ねて~ブリーダーズ・スタリオン・ステーション
母が「コートアウト」だから「ストロングリターン」。強烈なリターンショットを連想させる、その名前通りに見る者の印象に深く残る瞬発力を武器に2012年の安田記念(G1)を1分31秒3のレースレコードで制したのが本馬だ。
500キロを優に超える雄大な馬格から繰り出されるパワーを武器に有馬記念(G1)連覇、天皇賞・(秋)(G1)連覇で2年連続年度代表馬に輝いた父シンボリクリスエス譲りの見栄えする馬体。しかし、周囲の関係者は前進気勢が強すぎる同馬がもっとも能力を発揮できるのは長い距離のレースではないと判断してマイル前後の距離を選んでレースプランを組み立てた。
5歳春、京王杯スプリングC(G2)を勝って挑んだ安田記念(G1)はクビ差2着。秋のマイルチャンピオンシップ(G1)を目指していたタイミングで骨折が判明し、その後も脚部不安に襲われるなど思うようにレースを使えなかったが、1年後の安田記念(G1)ではレースレコードとなる1分31秒3で優勝。溜飲を下げている。
通算成績は21戦7勝。そのレースキャリアの中で3億円を超える賞金を稼ぎだした同馬は現役引退後、日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションで種牡馬となり、その初年度産駒は、中央、地方競馬で活躍。2017年のNAR新種牡馬ランキングではエスポワールシチー、ヘニーヒューズに次ぐ第3位となり、年明けには初年度産駒のツヅミモンがシンザン記念(G3)でアーモンドアイの2着。ほか3年目プリンスリターンが昨年秋に2つのリステッドレース含むオープン3連勝と期待が膨らむ活躍中だ。
管理するブリーダーズ・スタリオン・ステーションでは「今年で16歳、9年目のシーズンを迎えていますが、良い意味で変わりなく過ごしています。父シンボリクリスエスゆずりの気の強い面は以前のまま。馬はすこぶる元気で、体調も良さそうです」と胸を張っている。
隣の放牧地では種牡馬生活1年目のマテラスカイが若さを誇示するように動き回るのに反応して、負けずと自身をアピールする。
張りのある馬体、シャープな動きは若さを保ったまま。「2016年からはシンボリクリスエスと同時繋養となり、19年にシンボリクリスエスが退厩した後は厩舎も、放牧地もシンボリクリスエスが使っていたところを使っています」とのこと。
シンボリクリスエスの血はエピファネイアやルヴァンスレーヴを通して馬産地に拡散中だが、先輩G1優勝馬としては意地を見せたいところ。
「まだ老け込む年齢ではないので、もう一花も、ふた花も咲かせてほしいです。産駒を競馬場で見たら応援してください」とスタリオン担当者からのメッセージだ。