ディープスカイを訪ねて~ひだか・ホース・フレンズ
美しいばかりの栗毛の馬体と大流星。その派手なルックスから繰り出される豪快な末脚を武器に2008年のNHKマイルC(Jpn1)、そして日本ダービー(Jpn1)を制し、秋シーズンから古馬戦線へと殴り込みをかけたディープスカイが残した足跡は革命的だった。
NHKマイルC(Jpn1)、そして日本ダービー(Jpn1)の両方を制したのは04年のキングカメハメハ以来、4年ぶり史上2頭目。時代が平成から令和へと移り変わっても、この新時代の2冠を達成した馬はディープスカイを最後に見ることはできない。
そして世代最強の称号を得た同馬は、その年の秋から1歳違いのウオッカ、ダイワスカーレット、スクリーンヒーロー、ドリームジャーニー、2歳年上のメイショウサムソン、マツリダゴッホなどを相手に天皇賞(秋)(G1)、ジャパンC(G1)、産経大阪杯(G2)、安田記念(G1)、宝塚記念(G1)などの大レースで上位争いを繰り返して記憶にも記録にも残る名馬として確固たる地位を築いている。
また12年間に及ぶ種牡馬生活ではサウンドスカイ(全日本2歳優駿(Jpn1))キョウエイギア(ジャパンダートダービー(Jpn1))と2頭のJpn1優勝馬を送り、京都記念(G2)などに勝ったクリンチャーは凱旋門賞(G1)にも挑戦。話題を振りまいてくれた。
そんなディープスカイが2021年の種付けを最後に種牡馬生活から引退。認定NPO法人引退馬協会が行う「フォスターペアレント(里親)制度」の「フォスターホース」として、同年9月28日から日高町の「ひだか・ホース・フレンズ」で功労馬として余生を過ごしている。
2005年に、浦河町の笠松牧場で産声をあげた同馬は現在17歳。張りのある美しい栗毛の馬体は健在で、ひと目でディープスカイだとわかる大流星も懐かしい。
「功労馬としての新しい環境に慣れるまで少し時間がかかりましたが、今ではすっかりと落ち着き、食欲も旺盛。馬体もふっくらとして、毛ツヤも良くなってきました」とは、ひだか・ホース・フレンズの村上善巳場長。ここひだか・ホース・フレンズは、生産界を継続的に発展させるために日高管内の27関係団体が立ち上がって設立された団体で、人材養成事業や、馬産業の啓蒙普及事業、引退競走馬の利活用推進事業など様々な事業活動に取り組んでおり、ディープスカイほか、メイショウサムソン、メイショウアイアンなどが余生を送っている。
2022年5月現在、新型コロナの感染拡大防止の観点から一般見学は休止しているものの、その派手なルックスと、高いレベルで堅実な成績を残した同馬はファンの間でも人気が高いそうだ。
ただ村上場長の言葉を借りれば「少々神経質な面がある」とのこと。5月になって放牧地を変える際は少々心配したそうだが、そんな人間の心配はまったく意に介さず、現在は現役時代に何度か顔を合わせたメイショウサムソンとは隣同士の放牧地で、午前5時30分から午後1時30分までの放牧時間を楽しんでいる。
「今まで大事にされてきたからだと思うのですが、人間に対して強い信頼感を持っている馬で、人懐っこい馬なんです」という言葉どおりに、人間が近づくと無防備に寄ってくる姿もかわいい。
「そんな性格の馬ですから、たくさんのファンの方々が元気に過ごしているディープスカイの顔を見に来てくれたら、馬も喜ぶのではないかな」と“その日を”場長も楽しみにしている。