馬産地コラム

スマートボーイを訪ねて~アロースタッド

  • 2015年04月08日
  • スマートボーイ
    スマートボーイ
  • 今年20歳となるが、年齢ほど老いはない
    今年20歳となるが、年齢ほど老いはない
  • 具合良く、今年も種付けを始めている
    具合良く、今年も種付けを始めている
  • 孫世代の活躍も増えていきそう
    孫世代の活躍も増えていきそう

 新ひだか町静内のアロースタッドで種牡馬生活を送るスマートボーイ(グランド牧場生産)を訪ねた。

 3月のある晴れた日、アロースタッドを訪ねると、繁殖牝馬を乗せた馬運車が行き来していた。まもなくすれば、種付けシーズンの繁忙期に突入する。スマートボーイは奥の放牧地でマイペースに草を食んでいた。時折、種付け場から馬のいななきが聞こえると、サッと顔を上げて反応し、また何事もなかったように草を食べた。

 「年齢以上に若く、体調は安定していますね。ダートで結果を出していますが、馬自身はそれほど大きくはなく、名前通りの体つきです。種付けをよく理解していて、手のかからない馬ですね。」と、紹介してくれたのは、アロースタッドの本間一幸主任。ここ数年の交配頭数は15頭前後で推移しているが、3歳世代の産駒スターローズが浦和・桜花賞トライアルのユングフラウ賞を快勝し、交配増につながる朗報をもたらしている

 スマートボーイの現役時代はダート中距離戦を得意とし、果敢な逃げ馬だった。伊藤直人騎手との息の合ったコンビが思い出される。展開のカギを握り、時には早々と追撃されて失速することもあったが、勝ちパターンに持ち込むと滅法強かった。アンタレスS(G3)と平安S(G3)の連覇、マーチS(G3)を合わせた5つの重賞勝ちを決め、生涯で4億円を超す賞金を獲得した。

 種牡馬入り後は生産者・グランド牧場の繁殖牝馬を中心に配合され、約100頭の産駒がデビューし、その中からトウホクビジン、ナンテカなど7頭の地方重賞馬が誕生した。2歳から9歳まで息長い競走生活を送った父の血を受け継ぎ、産駒は仕上がり早な一方で古馬になっても好調を持続し、ダートでパワフルな走りを見せる。

 「距離の融通が利き、丈夫な産駒が多いですね。先日重賞を勝ったスターローズもそうですが、牝馬の活躍が目を引きます。」と、本間さんは産駒を分析する。最近では母の父として孫世代もデビューしており、その中からフィーリンググーが昨年の道営2歳重賞で上位争いし、交流重賞エーデルワイス賞(Jpn3)では最速の上がりで4着に入った。

 今年で大台の20歳を迎えたが、同年生まれの種牡馬キングヘイロー、グラスワンダー、スペシャルウィークとともに、ベテランの意地を見せたいところ。近年の種牡馬界は早く結果を求められがちで、僅かな世代の走り次第で引退を余儀なくされることもままある。そうした状況を踏まえれば、スマートボーイは堅実に、地道に産駒成績を残したことで、立派に争いを勝ち抜いてきた一頭だ。本間さんは、「引き続き長い種牡馬生活を送っていけるように、一緒に頑張っていきたいです。今年のクラシックで楽しみな産駒がいますし、春は力が入りますね。また、母の父としても期待は大きいです。」と、血統の繁栄を願う。若い牝馬の声に敏感なあたり、高齢ながら男としてのやる気は十分。競走馬時代に見せたしぶとさは、種牡馬となった今も大きな武器として生きている。