馬産地コラム

ルーラーシップを訪ねて~社台スタリオンステーション

  • 2014年03月06日
  • ルーラーシップ
    ルーラーシップ
  • 偉大な父、母の血統を後世へ伝えていく重要な役割を担っている
    偉大な父、母の血統を後世へ伝えていく重要な役割を担っている
  • キリっとした引き締まった聡明な顔
    キリっとした引き締まった聡明な顔

 牡馬に生まれ落ちた、その瞬間から種牡馬となることがさだめられていた馬、それがルーラーシップだ。父キングカメハメハ、母エアグルーヴ。その血統表のどこを探してもサンデーサイレンスの文字を見つけることができないが、日本で求めうる最高レベルの血統であることを疑う余地はない。

 「昨年は有馬記念(G1)を使ってからの引退でしたので、やや準備期間が少なかった面は否めませんが、それでも大変多くの配合申し込みをいただきました」と事務局。発表されたリストをみればメジロドーベルやエイシンサンサン、エリンコートのようなビッグネームが並ぶが、やはりサンデーサイレンス系牝馬が目立つ。前述のエリンコートはもちろん、フサイチエアデールやエフティマイア、ハッピーパスにヴィーヴァヴォドカなどなど。驚いたのはディープインパクトの娘が多数含まれていることだ。その中にはワールドエースの全妹などもいる。まさに時代の最先端を行くような配合馬で、夢を広げている。

 7歳。現在は種牡馬として2年目のシーズンを迎えている。今年は雪が多く、放牧地には雪がたっぷりと降り積もっているが、撮影のために馬服を脱がせてもらうと、その下からはビロードのような美しい皮膚に包まれた均整のとれた馬体が顔をのぞかせた。キリッと引き締まった聡明な顔。本当に美しい馬だ。

 通路を挟んだ目の前の放牧地には、今年からスタリオンの仲間入りを果たしたロードカナロアが。同じ父親から生まれたことを知る由もないルーラーシップは、そんな新人の存在を意に介さずにマイペース。やや広めの放牧地を自由気ままに歩き回っている。その隣でネオユニヴァースが走りまわっても動じることなく、草の下から顔をのぞかせている新芽をついばんでいる。

 「馬体だけの印象でいえば、キングカメハメハというよりは母エアグルーヴ、あるいはその父トニービンの面影があるような気がします」と事務局。この春は、あちらこちらの牧場から初年度産駒誕生の知らせが届いているというが、生まれてくる子供たちも現役時代に500キロを超えていた馬体を引き継ぐような産駒が多いという。

 「今年は同じ父を持つ強力なライバルが仲間入りしましたが、適性距離も違いますし、影響はないと考えています。それよりも、ともに協力しあってキングカメハメハ系を広げてくれることを期待したいです」と言い「残念ながら、日本ではG1タイトルに恵まれませんでしたが、香港でのレースや一連のG1競走ででこの馬の力を証明することができました。この馬には自身を超えるような産駒を送り出してくれることを期待しています」と期待に胸を膨らませている。

 そういえば、国内G1未勝利で香港G1勝馬といえばステイゴールドが思い浮かぶ。不謹慎かもしれないが、そんなことを思いながら取材を終えた。