馬産地コラム

スクリーンヒーローを訪ねて~レックススタッド

  • 2013年11月21日
  • スクリーンヒーロー
    スクリーンヒーロー
  • 人に寄って来る懐っこい一面も
    人に寄って来る懐っこい一面も
  • すっかり重厚になった馬体
    すっかり重厚になった馬体

 新ひだか町のレックススタッドで種牡馬生活を送る08年のジャパンC(G1)勝ち馬、スクリーンヒーローを訪ねた。

 今年デビューを迎えた初年度産駒からすでに10頭の勝ち馬を送り出しており、新馬戦をレコードタイムで制したモーリス、後続を9馬身引き離し快勝したオーシャンヒーロー、岩手重賞二連勝中のライズラインなど、強烈な個性を放つ産駒も登場している。

 「うちで一番ウルサイ馬。ちょっと油断するとかじったり、蹴ろうとして尻を向けて来るから、気を抜けないよ。朝昼夕方とフルで種付けしてもまだ元気が有り余ってるくらいタフなのはいい所だけど、誰でも扱える馬じゃないことは確か」と苦笑するのは同スタッドの泉山義春場長。当のスクリーンヒーローは、そんな泉山場長のボヤキを聞いているのかいないのか、青草を口いっぱい頬張って満足そうな顔をしていた。

 スクリーンヒーローは、2歳の11月、東京のダ1600でデビュー。同期にはウオッカやダイワスカーレット、ドリームジャーニーなど“強い牝馬”が印象的な世代だ。

 3戦目で勝ち上がると、初めて芝に挑戦したスプリングS(Jpn2)で5着。ラジオNIKKEI賞 (Jpn3)2着のあと、セントライト記念 (Jpn2)3着で菊花賞(Jpn1)への出走権を獲得した直後骨折が判明し、約1年間の長期休養を余儀なくされた。復帰初戦の支笏湖特別を勝利で飾ると3番人気で挑んだアルゼンチン共和国杯(Jpn2)で重賞初制覇。この勝利を受けて、次走の予定がステイヤーズS(Jpn2)からジャパンC(G1)へと大きく進路変更することになる。ディープスカイ、ウオッカ、メイショウサムソンという3頭のダービー馬の他にマツリダゴッホ、オウケンブルースリ、アサクサキングスとG1馬が顔を揃えるメンバーの中でスクリーンヒーローは9番人気に甘んじた。しかしその低評価を覆し、好位追走から直線で弾けると、他の追随を許さず先頭でゴール。無名の役者から銀幕のヒーローに変貌を遂げた瞬間だった。その後はG1馬の王道を駆け抜け、ディフェンディングチャンピオンとして臨んだジャパンC(G1)で13着と大敗したのち、左前脚に屈腱炎を発症。ターフでのスクリーンヒーロー物語は幕を閉じた。

 初年度に当たる現2歳世代は84頭に種付け。以降はやや下降気味だった種付頭数も、今年は80頭と初年度に迫る勢いだった。産駒デビュー前にも関わらず、ここまで種付頭数を増やした要因は、今年のHBAトレーニングセールに上場されたメジロフランシス2011(モーリス)の動きの良さだった。4月上旬、事前の調教ビデオ撮影で2番時計を叩きだしたモーリスの評判はたちまち馬産地へと広がり、3月末時点で16頭だった種付け頭数は4月中旬には32頭と倍増。更にセール本番で1番時計を記録し、1050万円(税込)で落札されたことが知れ渡ると種付予約が殺到し、5月末には70頭を超え、大忙しのシーズンを送った。

 オフシーズンの現在も産駒たちの活躍により来シーズンの種付けに関する問い合わせが相次いでおり「こんなに早い時期から反響があるとは思わず、対応に追われています」と事務局も嬉しい悲鳴をあげている。

 ヤンチャ坊主に手を焼いている泉山場長は「初年度はスクリーンヒーロー自身まだ体が出来てなくて不安定な要素があったのに、これだけ派手なパフォーマンスが出来る産駒が出たんだから凄いよ。2年目以降は種馬らしい体つきに変わって唸るような迫力も伴ったからもっと期待できると思う。扱うこっちは大変だけどね」と期待を膨らませている。