馬産地コラム

ローエングリンを訪ねて~レックススタッド

  • 2013年01月28日
  • ローエングリン
    ローエングリン
  • 毛ヅヤ良く、体調は万全
    毛ヅヤ良く、体調は万全
  • 冬季は馬服を着せて放牧している
    冬季は馬服を着せて放牧している
  • 食欲旺盛
    食欲旺盛

 レックススタッドで種牡馬生活を送るローエングリン(社台ファーム生産)を訪ねた。現役時代は重賞4勝、G1には2着1回3着3回と届かなかったが、昨年暮れに産駒がG1制覇をもたらし、その無念を晴らした。

 「引き続き、体調は良いですね。普段は大人しいですけど、内に秘めたものを感じます。油断しないように接しています。」

 朝7時30分、白い息を吐きながら泉山義春場長が伝えた。エーシンフォワード、マツリダゴッホの放牧地の近くに、ローエングリンはいる。栗毛の馬体が冬の朝日を浴びて一層輝きを放つ。雪を踏みしめながら、用意された牧草に飛びついている。

 栗毛がきれいで、いつ見ても上品。父シングスピールはドバイワールドC、ジャパンC(G1)、コロネーションC(G1)などワールドワイドに勝利し、母カーリングは歴史あるフランス・ヴェルメイユ賞(G1)を制した名牝。世界的良血馬が成せる生まれ持った美しさは、この馬の個性を映し出す。

 ローエングリンといえば、天性の速さを生かした逃げ戦法。スタートから楽にハナを奪い、マイペースに行ければ鮮やかに押し切る。現役時代、古馬となってから中山記念(G2)、マイラーズC(G2)を、それぞれ2度制した。海外遠征にも果敢に挑み、ムーラン・ド・ロンシャン賞(G1)では2着、香港マイル(G1)では3着に健闘した。時に、強力な同型馬がいても、簡単には譲らなかった。泉山場長の「内に秘めたもの」という言葉がよぎる。

 2008年に種牡馬入りし、これまで2世代・79頭がデビュー(2013年1月27日現在)。産駒は父同様に芝マイル前後を得意としている。待望の産駒の初重賞制覇の知らせは、最高の舞台から届けられた。2歳牡馬チャンピオンを決める朝日杯フューチュリティS(G1)で、産駒ロゴタイプが快勝し、ゴットフリートが3着に入った。

 「ちょうど種付けシーズンが近い時期の、良いタイミングで勝ってくれましたね。それもG1ですから。1着・3着という結果も大きいです。」と、泉山場長は頬を緩める。事務局にはすでに多くの問い合わせ・申し込みが寄せられ、馬産地話題の一頭に数えられている。昨年の交配頭数は30頭だったが、今年はその2倍?3倍?果たしてどれぐらいに達するだろうか、興味深い。

 「種付けは上手いし、タフな馬なので、交配頭数は十分こなせます。ロゴタイプ、ゴットフリートの血統構成から、サンデーサイレンス肌との相性も良いでしょう。」と、泉山場長。G1馬の父ながら種付け料はリーズナブルで、多数の新種牡馬がひしめく中でも、良い勝負になりそうだ。今春の産駒成績次第では、これまでで最も忙しいシーズンを送るだろう。

 「馬は若いですし、多くの繁殖牝馬を迎えていきたいですね。この調子で、活躍中のオープン馬以外にも、優秀な産駒を送り出していきたいです。」と、泉山場長のトーンは上がる。現役時代の走り同様、一旦ついた勢いは、力強く持続していけるに違いない。