馬産地コラム

ディープインパクトを訪ねて~社台スタリオンステーション

  • ディープインパクト~1
    ディープインパクト~1
  • ディープインパクト~2
    ディープインパクト~2
  • ディープインパクト~3
    ディープインパクト~3

 ディープインパクトの末脚は競馬場の空気を切り裂いた。前半は後方に位置するが、ひとたびゴーサインが出されるとグングン加速し、いつの間にかライバルたちは後方に置き去りにされてしまう。クラスや相手などは関係なかった。

 見るものに強烈なインパクトを与えた新馬戦。絶望的な位置からつきぬけた若駒S。スタート直後の落馬寸前のアクシデントをまったく問題にしなかった皐月賞(G1)。無敗で3冠を達成した菊花賞(G1)。さらには常識を覆した天皇賞(春)(G1)。そのどれもがドラマティックで“非日常”だった。

 そのディープインパクトが引退する際「全部がすごいと思ったけど、やっぱりジャパンC(G1)が一番印象的でした」と語ったのは生産者ノーザンファームの吉田勝己社長だった。「凱旋門賞(G1)を使って、そして帰国して最初のレース。レース間隔が開いていることや、2度の長距離輸送による目に見えない疲れ。レースの前はそんな心配もしていましたが、あのレースは素晴らしかった」と賞賛した。

 そのジャパンC(G1)は2006年11月26日。このレースにはディープインパクトだけではなく、遠征したドバイシーマクラシック(G1)を楽勝し、世界最高峰レースのひとつキングジョージⅥ&クインエリザベスS(G1)で健闘したハーツクライも出走メンバーに名を連ねていた。挑んできたのは欧州年度代表馬ウィジャボードや若き2冠馬メイショウサムソン、3歳トップクラスの実力馬ドリームパスポートなど。それでもディープインパクトへの期待はレース史上最高の単勝支持率61.2%が雄弁だった。

 そして、いつものディープインパクトがいた。レース前半は最後方。残り800m地点くらいからゴーサインが出されると、孤高の地を行くが如くの走りを見せてゴールではドリームパスポート以下に2馬身の差をつけていた。

 あれから5度目の秋がやってきた。現在、ディープインパクトは社台スタリオンステーションで来るべきシーズンに向けて鋭気を養っている。放牧地ではのんびりと草を噛むというよりもちょこちょこと動き回っている。じっとしているのが嫌いというよりも、動くのが好きなようにも見える。そんなディープインパクトの種牡馬成績について、同スタリオンでは「素晴らしいという以外に言葉が見つかりません」と高い評価を与えている。産駒がデビューするや、アグネスタキオンが持っていたJRA2歳新種牡馬の勝馬頭数記録を更新し、サンデーサイレンスが記録した同新種牡馬の勝利数記録、総獲得賞金記録も塗り替えた。

 さらには最初のクラシックレース桜花賞(G1)を産駒のマルセリーナが制し、リアルインパクトは3歳春に古馬相手の安田記念(G1)に勝利した。1勝馬が古馬G1レースを制したのは史上初のことだそうだ。そうした規格外の活躍もまた、ディープインパクトの血を引くものらしい芸当だ。

 ディープインパクトの前に道はなく、ディープインパクトのあとに道はできる。もしかしたら、本当の意味でディープインパクトのすごさを実感するのは、これからなのかもしれない。そんな気にさせるファーストクロップの活躍だ。