馬産地コラム

ツルマルツヨシを訪ねて~カウボーイアップランチ

  • 2011年02月02日
  • ツルマルツヨシ~1
    ツルマルツヨシ~1
  • ツルマルツヨシ~2
    ツルマルツヨシ~2
  • ツルマルツヨシ~3
    ツルマルツヨシ~3
  • ツルマルツヨシ~4
    ツルマルツヨシ~4
  • カウボーイアップランチのクラブハウス
    カウボーイアップランチのクラブハウス

 1999年の朝日チャレンジカップ(G3)、京都大賞典(G2)を勝ったツルマルツヨシ(セン16歳、父シンボリルドルフ 母スィートシエロ)を宮崎県宮崎市清武町のカウボーイアップランチに訪れた。

 本馬は1998年、4歳(現3歳)の5月にデビュー。未勝利戦を勝つと半年の休養に入り、復帰2戦目の犬山特別(500万下)で2勝目を挙げた。後述、担当厩務員さん曰く「(ツヨシという)名前に反して体質が弱くて苦労しました」と言われるように、出走取消や休養を挟む事が多かったが、5歳(現4歳)秋に朝日チャレンジカップ(G3)、京都大賞典(G2)を連勝した。

 京都大賞典(G2)の勝利はメジロブライト、テイエムオペラオー、ステイゴールド、スペシャルウィークと錚々たるG1馬達を破ってのものであり、迎えた天皇賞(秋)(G1)では2番人気に推されたが8着に敗れた。有馬記念(G1)はグラスワンダーとスペシャルウィークの“世紀の接戦”の影に隠れた形となったが0.1秒差の4着に健闘、翌年の活躍が期待されたが再び10か月の休養となり、復帰後2戦目の有馬記念(G1)、最後の直線で左前繋靭帯を断裂、競走能力喪失の判断が下され、無念の引退となった。通算成績11戦5勝。

 引退した本馬だったが、2002年より京都競馬場にて誘導馬としてデビュー。自身が制した京都大賞典(G2)で誘導馬を務めるなどファンサービスにも活躍したが、脚元の負担が誘導馬を続けられる状態では無くなり、誘導馬を引退、BTC「引退名馬等のけい養展示」の引退名馬としてカウボーイアップランチで余生を過ごすこととなった。

 「こちらに来た縁は、栗東で担当していた装蹄師さんからのご紹介です。『調教師(二分久男氏)も、馬主さん(鶴田任男氏)も宮崎県の出身だからどうだろう?』と言われて引き受けることにしました」と語ってくれたのはカウボーイアップランチの宮田めぐみさん。

 「性格はおっとりしていて、甘えた性格で(乗馬クラブの)会員さんにも人気が有りますね。多くのファンが会いに来てくれるだけでなく、シンボリ牧場時代に世話していたという元牧夫さんが会いに来てくれた事も有りますし、(現在は西園厩舎に所属する)現役時代の厩務員さんからは今もリンゴやバナナが送られてきます。もちろん、地元ですから鶴田オーナーのご家族も何度も会いに来てくれますよ。引退名馬を預かるのは初めてですが、(素直な性格からも)厩舎や牧場で本当に可愛がられていたことが伺えますね」と嬉しそうに語ってくれた。

 カウボーイアップランチの代表である宮田朋典さんは、海外で馬の心理学や装蹄学を学び「ホースクリニシャン」としても活躍している。精神的な問題を抱えた馬を矯正する技術は、乗馬の世界だけでなく生産地でも評価され、忙しく全国を飛び回り、講習会やカウンセリングを行っている。

 「基本的には、大人しくしてるツヨシですが、(悪癖矯正のカウンセリングで)若馬が来た時などは先輩風を吹かせてテンションが上がる時がありますね。若い競走馬を誘導していた昔を思い出すのでしょうか。そんな時は、脚元の負担にならないように若馬が見えないようにしたりと気をつかっています」と語る宮田さんの言葉からは、本馬への労りが感じられる。これからも元気にファンに愛想を振りまいてくれる事だろう。

 カウボーイアップランチへのアクセスは、宮崎市街からは車で15分、宮崎自動車道清武ICからは車で5分、日豊本線、国道269号、宮崎自動車道に挟まれた場所にある。清武ICを降り、国道269号を宮崎方面に約2kmほど進んだ右手の林の中にある。入口のアメリカ国旗と牧場の看板が目印だ。

カウボーイアップランチウェブサイト