馬産地コラム

アルデバランを訪ねて~JBBA静内種馬場

  • 2010年11月16日
  • アルデバラン~1
    アルデバラン~1
  • アルデバラン~2
    アルデバラン~2
  • アルデバラン~3
    アルデバラン~3

 凄い良血馬だ。そして、米国のチャンピオンスプリンターである。

 父は、世界の血統を変えたとまで言われるミスタープロスペクター、そのミスタープロスペクターが28歳のときに生まれ、母は英愛の3歳牝馬チャンピオン。アルデバランは、母も、祖母も、半弟もG1ウイナーという良血ファミリーから生まれている。

 英国の名門H・セシル厩舎で素質を磨かれ、デビュー戦を快勝。しかし、その後は5戦連続2着と勝運に見放された。一般レースでも2着。準重賞でも2着。重賞のジャージーS(G3)でも2着。7戦1勝2着5回3着1回。秋には戦いの場を米国のターフへと移し、初戦のナッソーHを快勝し、ハリウッドダービー(G1)3着で3歳シーズンを終えた。 

 4歳初戦はクレーミングレース。初ダートのここを快勝すると以降はダートの重賞路線を歩むことになる。3つのG1レースを含み、5戦連続2着。さすがにブリーダーズCマイル(G1)は大敗したが、シガーマイル(G1)でまたも2着。この年は8戦して1勝2着6回(G1レース2着4回)という成績だった。芝で、ダートでここまで17戦して3勝2着11回3着2回。恐ろしいまでに堅実で、勝ち味の遅い馬。それがアルデバランという馬だった。

 「普段は落ち着いた馬ですよ。なんていうか、真面目な馬です」と日本軽種馬協会静内種馬場の有里正人厩舎長が言う。内外から多くの来賓が訪れる同種馬場ではシーズン中以外でも馬を見せることが多いのだが、そんなときでも最も落ち着いているのが本馬だという。

 そんなアルデバランだが、現役時代は5歳初戦のサンカルロスH(G1)快勝後、大きく変身する。強烈な末脚を武器に5馬身差でここを圧勝すると、この年は3つのG1レースを含めて8戦5勝。さすが6ハロンのブリーダーズCスプリント(G1)は人気を裏切ってしまったが、7~8ハロンの距離における年間を通した活躍が認められて同年のチャンピオンスプリンターに選出された。いつの間にか、アルデバランは良血馬のチャンピオンホースとなっていた。

 「環境の変化にも強い馬ですし、どんな馬とでも相性が悪くなるということはありません。優等生です」というのは同協会の遊佐種馬課長だ。同種馬場では年間を通してほぼ乗り運動を行なっているが、そんなときでも優等生だという。

 2004年から米国ケンタッキー州で種牡馬となったアルデバランを待っていたのは100頭以上の繁殖牝馬だった。そうして生まれた中の1頭が2008年のファルコンS(Jpn3)を勝ったダノンゴーゴーだ。すでに日本、アメリカ、そしてヨーロッパで重賞勝馬を出して、その期待に応えている。日本でも初年度産駒はこの春産声をあげており「牧場での評判も上々」と期待する声は大きい。種牡馬としても優等生ぶりを期待したい。