馬産地コラム

エアジハードを訪ねて~ブリーダーズスタリオンステーション

  • 2010年11月20日
  • エアジハード~1
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  • エアジハード~2
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  • エアジハード~3
    エアジハード~3

 血統とは不思議なものだ。消えかけた灯火が、再び勢いを増してきた。

 それがひとつの時代を築き上げた底力というものか。

 父サクラユタカオーからテスコボーイへとさかのぼる父系。ここではテスコガビーなど牝馬の活躍馬は割愛させてもらうが、それでもランドプリンス(皐月賞)、キタノカチドキ(皐月賞、菊花賞)、インターグシケン(菊花賞)、トウショウボーイ(皐月賞、有馬記念)、ホクトボーイ(天皇賞)、ハギノカムイオー(宝塚記念)…。チャンピオンサイアーに輝くこと5度の名種牡馬は牡馬だけでも大レース勝馬を次々と輩出し続け、晩年にサクラユタカオー(天皇賞(秋)(G1))という快速馬を世に送り出した。その仔が、孫が、時代を経て活躍している。

 かつて、英国の競馬記者トニー・モリス氏が、わがニッポンを“名馬の墓場”と評したのは今は昔。現在では日本産馬の仔が欧州のクラシックレースを制する時代になり、当時輸入された種牡馬の血がいまも父系として、あるいは母系に入って日本産サラブレッドの源となっている。

 父エアジハードとともに安田記念(G1)の父仔制覇を成し遂げ、祖父サクラユタカオーから3世代連続でG1優勝を記録したショウワモダンは、その名前のとおりに昭和の浪漫あふれる馬だった。

 「この馬の持っているスピードをしっかり受け継いだ産駒が活躍してくれて嬉しい限りです」と日高町にあるブリーダーズスタリオンステーションの坂本教文主任が笑顔を広げた。

 「栗毛の流星という派手な馬でもありファンの多い馬ですね。夏の見学シーズンにはこの馬目当ての人も多いです」という。そんなファンにサービスをしているわけではないだろうが、放牧地では、まだまだやんちゃな一面を見せるそうだ。

 「やんちゃ、というか落ち着きがないというか(笑い)。15歳になりましたが、人でも馬でも素通りは許さんといった感じですぐちょっかいかけて来るんですよ」という。実際、数いる種牡馬の中でも放牧地写真を撮影するということにおいては、かなり楽な1頭だ。いつも放牧地をうろうろしている。

 「なので、出し入れがスムーズに進むように放牧地は厩舎に近いところを配置されてるんですよ。好奇心があって、毎日走り回っているから、体も気持ちも若いのかもしれませんね」と頼もしそうだ。

 やや晩成型ながら、初年度アグネスラズベリが重賞に勝ち、4世代目産駒ショウワモダンがG1ウイナーとなった15歳。「大切にしていきたい血統ですね」という言葉に力を込めた。