スズカフェニックスを訪ねて~うらかわ優駿ビレッジ AERU
競走馬を引退後、8年間の種牡馬生活を終え現在はうらかわ優駿ビレッジ AERUでのんびりと功労馬暮らしをしているスズカフェニックス(稲原牧場生産)を訪ねた。
父サンデーサイレンス、母ローズオブスズカ、母の父Fairy Kingという血統のスズカフェニックスは、2歳秋のデビュー。3歳2月に初勝利を挙げ、夏の函館で2勝目を挙げると長い休養を経て4歳5月に復帰、5歳1月に東京新聞杯(G3)を制し、3月に高松宮記念(G1)に駒を進め、G1初挑戦にして見事勝利を収めた。種牡馬としては産駒にウインフェニックス(2014年ラジオNIKKEI賞(G3)3着 母シャインプレジャー)、マイネルホウオウ(2013年NHKマイルC(G1)1着 母テンザンローズ)などがいる。
「一昨年種馬を引退し去勢手術をしてそのままこちらにやって来ました、当初は術後の痛さや環境の変化もあり予想通りにうるさい所がありましたね。種馬あがりのサンデーサイレンス産駒、しかもまだ14歳と若かったので手がかかるだろうなと、覚悟をしていたのです。それが落ち着いて来ると引き馬の時もゆったり歩いてくれますし、手入れの時も甘噛みなどせず大人しくしています。むしろウイニングチケットの方がうるさいくらいですよ(笑)放牧地では周りの馬に対してやんちゃをしたりする事はありますが、人間に対しては優しい馬です。」スズカフェニックスの様子を話してくれたのはうらかわ優駿ビレッジ AERUの乗馬課、乗馬インストクター・チームリーダーの太田篤志さん。これまでにも個性的な功労馬と向き合って来た経験者だ。
一日のスケジュールは、朝6時に朝飼い、7時に放牧、15時位に集牧、手入れ、夕飼いという流れ。「手入れは毎日欠かさずやります。あまりにも悪天候の時は放牧をしない代わりに、厩舎の中で引き運動をするなどしてケアしています。蹄が決して丈夫とは言えないくらい薄い馬なので、傷めないように歩く環境には気を遣っています。短距離レースに強かった印象ですが現役時代をよく頑張っていたなと思います。放牧した時に放牧地を駈けて行く脚の運びはさすがスプリンターという走り方をしています。今月スズカが勝利した高松宮記念(G1)がありますので楽しみですね。」
うらかわ優駿ビレッジ AERUにはスズカフェニックスの他に、ウイニングチケットとヒシマサル、ニッポーテイオーが繋養されていたが2年前にニッポーテイオー(33歳)、つい先日にはヒシマサル(29歳)が亡くなってしまった。「ヒシマサルは愛嬌があって個性的な馬だったのでウイニングチケットに会う目的で来たファンの方がヒシマサルを見て好きになるという事が多かった馬でした。スズカは感情豊かで、餌を食べたい、放牧地に行きたい、厩舎に帰りたいなど自分の欲求に対して素直に表現してくれる接しやすく可愛い性格です。まだ16歳と若いので功労馬の将来を担い看板馬になってもらいたいですね。いくつになってもサンデーサイレンス産駒らしさを見せて欲しいと思いますし、そんな姿を見てもらい現役時代を知っている方はもちろんですが、功労馬になってからのファンが増えてくれたら嬉しいです。」
放牧地での相棒カラトンはAERUが始まった当初から乗馬として活躍していたが目を悪くしてしまったために昨年引退した。「昔からファンだった方がオーナーになって下さったのでスズカと一緒にのんびりと暮らしています。愛されていますね、ありがたいです。スズカには心優しいカラトンと刺激し合いながら、放牧地でやんちゃをして余計な怪我をしないように長生きして欲しいです。」スタッフの温かい目に見守られて悠々自適に暮らすスズカフェニックスに是非会いに行って欲しい。