ホッコータルマエを訪ねて~優駿スタリオンステーション
3歳1月のデビューから7歳11月の引退まで、タフに、長く走り続けた5年間。日本全国で中央、地方合せて14の競馬場にその足跡を残し、ドバイワールドカップ(G1)には3度も招待された。距離に換算すれば72,900m。たった1度だけ経験したドバイワールドカップ(G1)でのオールウェザー馬場を除けば、その全てをダート競馬で記録した。ダートの帝王ホッコータルマエは現役生活を引退後、新冠町の優駿スタリオンステーションと浦河町のイーストスタッドを往復する国内シャトルスタリオンとして種牡馬デビューしている。
種牡馬生活をスタートさせたのは、新冠町の優駿スタリオンステーションからだ。「初年度から164頭の繁殖牝馬を集めることができました。本当にすごい人気でしたがそれをあっさりとクリアしてくれたこの馬には頭が下がる思いです」というのは同スタリオンステーションの山崎努マネージャー。この馬は、サンデーサイレンスの血を持たないキングカメハメハ産駒。配合牝馬を選ばない血統構成と500キロを超える馬格。そして何よりも歴代単独トップの「10」(当時)となるG1/Jpn1タイトルは生産者にとって魅力的。
「ひとことで言えば、真面目な馬です。とにかく無駄なことをしない馬。放牧地ではひたすら草を噛んでいます。走っているようなシーンは見たことがないです」と山崎さん。実は、同馬の父キングカメハメハを扱う社台スタリオンステーションのスタリオンスタッフからも同じ言葉を聞いたことがある。
そして、種付けも上手で受胎率が高いからこそ、父同様に多くの種付けをこなせたのだろう。この日も早朝の取材となったが、手綱を解かれた位置で草を噛みだした。アクティブなシーンを予想していたカメラマンが苦笑いをしている。
「いろいろな競馬場を経験しているからかもしれませんが、環境の変化に強く、食欲も旺盛。飼葉を残したことは記憶ない」と褒め言葉が続く。加えるならば回復力が高い。ドバイ遠征から帰ってきたあとは体調を崩す馬が多く、この馬も例外ではなかったが、しっかりと休養を取ったあとに復帰している。この体力、回復力こそが10のビッグタイトルを積み上げた最大の理由だろう。
「初めてみたときの印象は、手先が軽く、シャープな身のこなしをする馬だなということです。いわゆるダート馬にありがちな筋肉量の多いタイプではなく、血統も名前も知らされないで馬だけを評価しろと言われたら芝馬と言ってしまうかもしれません」。
もしかしたら、産駒はホッコータルマエ自身が経験をしていない芝コースで活躍するような馬も出てくるかもしれない。
注目の初年度産駒が産声をあげるのは、もうすぐだ。