馬産地コラム

ニシノフラワーを訪ねて~西山牧場

  • 2017年04月06日
  • ニシノフラワー
    ニシノフラワー
  • 28歳とは思えない若々しい馬体
    28歳とは思えない若々しい馬体
  • 1000mの走路
    1000mの走路
  • 西山牧場育成センターのエントランス
    西山牧場育成センターのエントランス
  • 西山牧場育成センターの看板
    西山牧場育成センターの看板

 1992年桜花賞(G1)の優勝馬、ニシノフラワーを訪ねた。生まれ故郷の西山牧場で繁殖牝馬としての役目を引退し、今はのんびりと余生を送っている。

 ニシノフラワーは父Majestic Light(米国産、マンノウォーS(G1)、スワップスS(G1)などG1を4勝)、母デユプリシト(米国産)、母父Danzig という良血馬。母デユプリシトは米ケンタッキーの繁殖牝馬セールで西山牧場が購入し、ニシノフラワーを出産する直前に輸入された。産駒は初仔のニシノフラワーをはじめ、ファンタジーS(G3)3着のニシノタカラヅカ、中央で4勝したニシノファイナル、ニシノマイヒメなどを送り出した。

  デビューから高い能力を発揮したニシノフラワーは、新馬戦を4馬身差、続く札幌3歳ステークス(G3)を3馬身半差で圧勝。その後もデイリー杯3歳ステークス(G2)、阪神3歳牝馬ステークス(G1)を快勝して4戦4勝でこの年のJRA最優秀3歳(当時)牝馬に輝いた。翌年桜花賞(G1)で3馬身半差の圧勝をするも、レースの舞台が中・長距離戦に移るオークス(G1)、エリザベス女王杯(G1)では厳しい戦いが続いた。しかし、短距離路線に矛先を変えたスプリンターズステークス(G1)では、初めての古馬との対決にも関わらず優勝。前年に続きJRA最優秀4歳牝馬(当時)と、最優秀スプリンターの二冠に輝いた。

 競走馬を引退した後、繁殖牝馬として西山牧場に戻って来た当時の様子を同牧場場長、山田研児さんに振り返ってもらった。「現役時代はピリピリしていて人を寄せ付けませんでした。この血統はみんな気性が激しい所がありますので繁殖牝馬になっても最初は良いお母さんではありませんでしたが年齢を重ねると共に子育ても上手になりました。今はおっとりした性格ですよ。もうおばあちゃんですから。」そう言って目を細めた先に佇むニシノフラワーは馬体や歩様に衰えは見えず、毛ヅヤ、顔つきも28歳という年齢を感じさせる所はどこにもない。山田場長やスタッフの会話に参加するかのように好奇心旺盛な眼差しを向けている。馬房の入り口には可愛らしい花で作られたリースやお守りが飾られていて大切にされているのがよくわかる。「朝5時から放牧して2時に集牧、ご飯を食べて手入れをしてという毎日です。歯が丈夫なので食欲があって、きちんと餌を食べる事が出来るので馬体もしっかりしていますよ。2歳時は痩せてひょろっとしていて見栄えのする馬では無かったのですが、調教を担当していた育成スタッフの「乗り味が凄く良い」という言葉がとても印象に残っています。」貴重な育成時代を知っているスタッフが才能をうかがわせる懐かしいエピソードを楽しそうに話してくれた。

 西山牧場は北海道の日高町と茨城県に育成センターを所有し、強い馬作りに取り組んでいる。日高町富川にある育成センターでは広大な敷地を利用して1000mの屋外馬場をはじめ坂路など充実した施設を完備し、30人のスタッフが「早期デビュー、一つ勝ち上がること」を念頭に置いて真剣に馬と向き合っている。「1勝するのはとても大変な事ですが全馬勝ち上がりを目標にしています。種牡馬では所有馬のリーチザクラウン産駒の活躍で牧場全体が盛り上がるんです。ニシノアップルパイもそうですし良い仔が多いので頑張って欲しいです。とにかく携わる全頭に頑張って欲しいですね。」力強い信念のもとに送り出された馬達の活躍に期待が高まる。

 ほとんど空き無く仔を産み育て、いつしか屋台骨となり血統を残した母デユプリシトは同じ厩舎で共に暮らしていたが残念なことに2年ほど前、30歳で亡くなってしまったそうだ。「デユプリシトとニシノフラワーは西山牧場を代表する繁殖牝馬と言えます。この血統の繁殖牝馬は広がりを見せ、ネロやニシノマナムスメなど多くの活躍馬を残してくれました。フラワーにはいつまでも長生きしてほしいですね。G1を3つも勝ってくれる馬にはそうそう巡り合えるものではありませんから。」華奢な馬体で、長距離から短距離まであっさりとこなしたニシノフラワーの血統を受け継いだ若駒が快進撃を見せる、その日が待ち遠しい。