グラスワンダーを訪ねて~ビッグレッドファーム
1998年、1999年の有馬記念(G1)に優勝したグラスワンダーを訪ねた。現在は、新冠町明和にあるビッグレッドファームで新生活を送っている。
グラスワンダーはアメリカ産馬で、父シルヴァーホーク、母アメリフローラ、母の父ダンジグという血統。競走成績は15戦9勝。新馬戦をデビュー勝ちしアイビーS、京成杯3歳S(G2)と3連勝。更に朝日杯3歳S(G1)をレコードタイムで優勝しこの年の最優秀2歳牡馬に選ばれた。骨折のため、3歳シーズン前半は棒に振ってしまったが秋に復帰すると有馬記念(G1)に優勝。外国産馬として初めてグランプリホースとなった。4歳時は京王杯スプリングC(G2)、宝塚記念(G1)、毎日王冠(G2)に優勝、有馬記念(G1)ではスペシャルウィークの猛追を凌ぎ僅か4センチの差で勝利し、前年に続き連覇を達成した。
現役引退後、2001年から社台スタリオンステーションで種牡馬入り。主な産駒は2008年のジャパンC(G1)優勝馬スクリーンヒーロー、2011年の宝塚記念(G1)優勝馬アーネストリー、2008年の朝日杯フューチュリティS(Jpn1)優勝馬のセイウンワンダーなどがおり、後継種牡馬のスクリーンヒーロー産駒からは、今年の天皇賞(秋)(G1)に勝利したモーリスが香港国際G1香港カップ(G1)に優勝し引退レースを見事な圧勝劇で飾った。
「10月29日にブリーダーズ・スタリオン・ステーションさんからこちらに移動して来ました。到着した日は、放牧地も変わり周りの馬も顔見知りがいないせいか若干落ち着かない様子で、少し離れた所に放牧しているコスモバルクと一緒に動き回ったりしていたのですが、ベテランですので環境に慣れるのも早かったです。今は他のどの馬が放牧地の前を通ろうと落ち着いていて、マイペースに草を食べています。この場所でこれから過ごすんだとわかっているのでしょうね。」グラスワンダーの近況を教えてくれたのは福田一昭さん。種牡馬の担当になって5年目というが、これまでに繁殖や1歳の馴致等々、同ファームの一通りの仕事を熟して来たベテランスタッフだ。
「今までの環境とは餌の内容が少し変わっていると思うのですが躊躇なく食べてくれました。毛ヅヤも良く21歳にしては体の線が崩れていません、体調は良好です。頭が良いので一つ一つ確認しながら行動して納得したら受け入れていますね。今はどっしり構えています。人間に甘えてくるタイプではなく自分の世界を持っているなと言う感じがします。集牧する際に放牧地に呼びに来ても自分からは近づいて来ないで、傍に来るまでじっとその場で待っているんですよ。」そう言って微笑みながらグラスワンダーが待つ放牧地の中ほどまで迎えに行った。何か話しかけながら一緒に歩いて来る姿を見ると、ベテラン同士の信頼関係で結ばれているのがよくわかる。種付けシーズンに向けては年齢を考慮しながら準備を進めているそうだ。「心臓や血管を健康に保つためにも毎日ウォーキングマシーンやロンギ場で汗をかくくらいの運動をさせながら備えていますので来年2月の種牡馬展示会で皆様にお見せするのが今から楽しみです。」
「コスモやマイネルの当ファームグループの繁殖牝馬はこの系統ととても相性が良く、管理や育成とも相性が良いようです。イメージを膨らませながら配合を考えるがとても楽しいですね。グラスワンダーは年齢的にはもう晩年ですがスーパーホースです。この馬を手掛けるのはスタリオンとしても嬉しいですし、これからの産駒から種馬になる馬がでてきても不思議ではないと考えています。ここから第2のスクリーンヒーローがでてくれて、将来種馬として戻って来てくれるような産駒がでてくれたらと思っています。」と大きな期待を寄せている。
ビッグレッドファームには、グラスワンダーの他にNHKマイルカップ(G1)をレコード勝ちしたダノンシャンティも新入厩した。可能性を秘めた種牡馬のラインナップに注目が集まっている。