タイムパラドックスを訪ねて~ビッグレッドファーム
2004年のジャパンカップダート(G1)など重賞9勝をマークした実績馬タイムパラドックス(白老ファーム生産)を訪ねた。現在は新冠町のビッグレッドファームで種牡馬生活を送っている。
タイムパラドックスは父ブライアンズタイム、母ジョリーザザ、いとこにサクラローレルがいる血統。母の父アルザオというプロフィールはディープインパクトと同じだ。現役時代は3歳春にデビューし、ダートで快調に勝ち上がって約1年後にはオープンへ昇級した。その後もコンスタントに競走生活を続けて6歳時に平安S(G3)を制すと、それを弾みに全国各地のダートグレードで好勝負を繰り返し、同年秋に挑んだジャパンカップダート(G1)で初のビッグタイトルを奪取した。ブライアンズタイム産駒らしく好調期間が長く、7歳時には川崎記念(G1)、帝王賞(G1)、JBCクラシック(G1)を快勝し、その年のNARグランプリ特別表彰馬を受賞。翌年はやや低迷したものの、ラストランとなったJBCクラシック(G1)で見事連覇を飾り、トータル10億円に迫る賞金を獲得して引退した。
「16歳となった現在も衰えなく、健康に過ごしています。少し太りやすい体質なので、そのあたりは注意していますね。ブライアンズタイム系種牡馬の特徴かもしれませんが、種牡馬としては穏やかな気性で、いつも落ち着いています。」と、紹介してくれたのは、ビッグレッドファーム・スタリオンスタッフの福田一昭さん。今年は90頭と交配し、昨年同様忙しいシーズンを送った。「多い時は1日3、4頭と交配しましたね。シーズン通じて順調で、後半にかけて増えました。性欲満々というタイプではないので、毎回気持ちをコントロールしながら種付けしています。」と、種牡馬としての顔に触れる。
産駒はこれまで5世代がデビュー。父を超えるような大物こそまだ現れていないが、昨年インサイドザパークが東京ダービー馬となったのをはじめ、地方競馬で11頭の重賞ウイナーが生まれている。今年の2歳世代からもオウマタイムが鎌倉記念を快勝し、続くハイセイコー記念でも僅差2着で、来年のクラシック候補に名乗り出ている。JRAではタイムズアローがオープンまで出世し、全体の勝ち星は圧倒的にダートが多い。
福田さんは、「ダート適性ははっきりしていますね。昨年の東京ダービー勝利はインパクトがあり、交配数アップにつながりました。父の競走成績を考えると意外ですが、産駒は短距離を得意とする馬や、2・3歳戦の活躍が目立っています。」と、産駒像を思い浮かべる。比較的仕上がり早で、ダートが合うとなれば、競馬場問わずバリバリと稼げるイメージが沸く。馬主孝行な馬を探すには打ってつけかもしれない。
来季の種付けシーズンも近づき、11月からはウォーキングマシーンに入ってコンディションを整えている。放牧地ではマイペースに草を食み、周りの馬は特に気にならない様子。毎年熱心に会いに来るファンも少なくない。通算で50戦走った馬で、種牡馬生活もきっと長く力を発揮してくれるだろう。福田さんは、「産駒の相性が良い南関東はもちろん、JRAでも成績を伸ばしていきたいですね。」と、期待を込めている。
同じ勝負服で走ったステイゴールドのように、やや晩成型だった自身の競走馬時代を振り返ると、種牡馬としてこれから更に評価を上げる展開もこの馬らしい。血統表に2代続く「タイム」の流れは、新時代のどこで針を光らせるだろうか。