マグナーテンを訪ねて~モモセライディングファーム
世界的な良血馬で、せん馬としては現役当時の最高賞金獲得記録をあげたマグナーテン(18歳)を訪ねた。9歳で引退後、札幌市清田区にあるモモセライディングファームで功労展示馬として余生を送っている。
父ダンチヒは1977年米国産、現役時代は米国で3戦3勝。骨折のために底を見せぬまま引退を余儀なくされたが、種牡馬としては爆発的なスピードを伝えて大成功。1991~1993年には米チャンピオンサイアーとなっている。日本での産駒はアグネスワールド(アベイユドロンシャン賞(G1))などがいる。母マジックナイトは1988年仏国産、仏6勝。ヴェルメイユ賞(G1)を勝ち、凱旋門賞(G1)2着、ジャパンC(G1)2着に入るなど世界で活躍した馬だった。
珠玉の良血馬であることと大きな馬格で期待されたがデビューは3歳の7月と遅かった。5歳の春に岩手の盛岡競馬場で行われた交流競走で待望の初勝利。5歳時に関屋記念(G3)で念願の重賞初勝利をあげた。その後も軽快な逃げ脚を武器に関屋記念(G3)を連覇し、毎日王冠(G2)ではエイシンプレストンを退けて勝利、ジャパンカップ(G1)では4着に入着した。7歳時にはアメリカジョッキークラブカップ(G2)に勝つなどして、9歳で引退するまで中距離重賞で長く活躍した。獲得賞金4億5,299万5,000円は当時のせん馬としては最高賞金獲得記録であった。
マグナーテンが余生を過ごしているモモセライディングファームには、元藤沢和雄厩舎の馬が多く在籍している。以前から親交が深い百瀬利宏さんは「藤沢先生には、何かと気をかけて頂いていて、本当に感謝しています。マグナーテンの現役時代はとても気性が荒かった馬だそうですが、ここに移動してからは大人しくおおらかな馬です」と現況を教えてくれた。
毎日の暮らしぶりは、朝に放牧、夕方に運動をして馬体を維持している。「運動不足にならないように社長(百瀬さんの父、利正さん)が保健運動をしています。功労馬なので、一般の方は乗ることはできませんが、速歩や駈歩くらいなら小・中学生でも乗れるくらい従順ですよ。気性が荒かったという現役時代を考えると、乗ったらすぐ走り出してしまうイメージかもしれませんが、逆に今は騎乗して全身の指示を出しても重たくて動かないくらいです。ただ、通常の運動ではなく少し変わった運動をさせようとして、何度も同じ事を繰り返しやると怒ったり反抗してきたりするんです。そういう要求をしないで乗っているだけなら、乗り味が良くて、大人しい子なんですよ。」マグナーテンなりの何かこだわりがあるのかもしれない。
たてがみを短く刈り込んでいるせいだろうか、18歳とは思えないくらい若く見える。ふっくらしていて毛ヅヤもあり元気そのものだ。「健康を維持して長生きさせたいですね。」牧草を食む姿を微笑みながら見つめる百瀬さんの姿が印象的だった。