テレグノシスを訪ねて~モモセライディングファーム
札幌市清田区の住宅街にある乗馬クラブ「モモセライディングファーム」で功労馬生活を送るテレグノシス(15歳、社台ファーム生産)を訪ねた。
モモセライディングファームにはテレグノシスをはじめ、マグナーテンやフサイチホウオーなど重賞ウイナーが8頭在籍し、功労馬または乗馬として活躍している。
テレグノシスは父トニービン、母メイクアウイッシュという血統。3歳時にはNHKマイルカップ(G1)に優勝したほか、4歳春の京王杯スプリングカップ(G2)はレコード勝ち。この年はフランスにも遠征してジャック・ル・マロワ賞(G1)で3着とその能力が世界でも通用することを証明した。5歳時には毎日王冠(G2)で逃げ粘るローエングリンをとらえて優勝。5勝すべてを東京競馬場で記録している東京巧者だった。
7歳秋。マイルチャンピオンシップ(G1)11着を最後に、丸5年にも及ぶ競走生活から引退。2007年からレックススタッド(新ひだか町)で種牡馬としての生活をスタートした。2010年に初年度産駒のマイネイサベルがメイクデビュー新潟で勝利し、新潟2歳ステークス(G3)を連勝して重賞初制覇。古馬となったその後も、府中牝馬ステークス(G2)、中山牝馬ステークス(G3)で重賞勝利をあげている。
モモセライディングファームの百瀬利宏さんに馬房を案内してもらい、テレグノシスの顔を見た瞬間、大きな瞳が私の目に飛び込んできた。テレグノシスとは千里眼を意味するとのこと。その名前のとおりにキラキラひかる大きな目が印象的だ。ここでは「テレ」と呼ばれている。
「ここに来た当初は環境が変わり、寂しさや不安のせいなのか絶えず鳴いたり騒いだりしていました。初めて放牧した時なんかはチャカチャカして一日中走り回っていたので、種牡馬を引退した馬ってこんなに元気なのかと本当にびっくりしました。」と、懐かしそうに当時を振り返る百瀬さん。「テレを迎えに行って、馬運車に乗せる時も、それはもう元気いっぱいでした。社台ファームの方からはすごく良い子だよって聞いていましたので、最初は少し戸惑いもありました。ですが、その後、去勢して落ち着いたら本当に素直で、おとなしい馬になりました。これが、本来の性格なんですよね。」そう話す百瀬さんの横で、テレは、一緒に会話をしているかのようにおとなしく佇んでいる。
夕飼が終わったあと、モモセライディングファームの社長であり、利宏さんの父利正さんとともに運動をしているそうだ。「77歳の社長をのせて、ゆっくり歩いたり、走ったりしているんですよ。テレには余計な要求をしないで、のんびりと生活をしてもらっています。近くの馬房にはマグナーテンやアドマイヤカイザー、ボールドブライアンもいて、みんなでマイペースな生活をしています。」
種牡馬を引退し、第3の馬生を歩み始めたテレグノシスは、あのキラキラした綺麗な目で、どんな事を思い出したりしているのだろう。遠くを見つめる横顔を見ていると、馬が今何を思っているのか知りたくなってしまう不思議な魅力を持った馬だった。