馬産地コラム

ヘニーヒューズを訪ねて~優駿スタリオンステーション

  • 2014年10月15日
  • ヘニーヒューズ
    ヘニーヒューズ
  • 日本の環境にも慣れた様子
    日本の環境にも慣れた様子
  • 今季は191頭と交配
    今季は191頭と交配
  • 春とは一転して、のんびりとしたシーズンオフを送っている
    春とは一転して、のんびりとしたシーズンオフを送っている

 今年から新冠町の優駿スタリオンステーションで種牡馬生活を送っているヘニーヒューズを訪ねた。多忙な種付けシーズンを終え、充電の日々を送っている。

 朝、取材・撮影のために放牧地へ行くと、涼しげな表情で草を食むヘニーヒューズの姿があった。栗色の毛が緑に映えている。虫も少なくなった秋は、尻尾で追い払う煩わしさもない。今年11歳となる馬体にはハリがあり、心身充実している様子がうかがえる。

 「こちらの環境にも慣れ、リラックスしています。春の種付けの疲労は多少ありましたが、すっかりとれました。9月、10月は朝から昼過ぎまで、のびのび放牧させています。」と、近況を紹介してくれたのは、同スタリオン主任の山崎努さん。繋養種牡馬となって半年以上が経ち、愛称「ヘニー」のキャラクターは把握済み。日本に来て最初の種付けシーズンを無事終え、安堵している。

 今季の交配頭数は191。この数字は同スタリオン歴代1位で、派手なスタートを切った。父はストームキャット系のヘネシーで、母の父メドウレイクという血統。サンデーサイレンス系と交配しやすい点を強みに、繁忙期は1日3、4回の種付けをこなした。山崎さんは、「近年、サンデーサイレンスの子孫となる繁殖牝馬が増えているので、こうした血統の種牡馬はやはり需要が高いですね。種付けは上手くて、受胎も良かったと思います。これだけの交配をした馬は初めて。馬産地の期待の表れだと思いますし、立派にこなしてくれました。」と、山崎さんは感心しきり。

 現役時代はアメリカで走り、2歳6月のデビューから3連勝で重賞を勝ち、持ち前のスピードをいかんなく発揮した。迎えた2歳王者決定戦・ブリーダーズCジュヴェナイル(G1)では、スティヴィーワンダーボーイの2着に敗れたが、その悔しさを晴らすかのように、3歳時はキングズビショップS(G1)、ヴォスバーグS(G1)を制した。その後、1番人気に推されたブリーダーズCスプリント(G1)ではよもや大敗を喫し、このレースを最後に引退となったが、レベルの高いアメリカ・ダートの一流快速馬として名を馳せた。通算成績は10戦6勝。連対を外したのは僅か一度だけという、底知れない競走馬だった。

 引退後はアメリカ・オーストラリアで種牡馬生活を送り、産駒ビホルダーがG1・6勝をあげ、父の果たせなかったブリーダーズCでも、2度の優勝を果たした。日本にも“マル外”として産駒がデビューし、その中からヘニーハウンドがファルコンS(G3)を、ケイアイレオーネが園田ジュニアグランプリ(Jpn2)、シリウスS(G3)を制し、サウンドボルケーノは準オープンまで出世した。

 少ない頭数ながら産駒が日本で成果を上げ始めた矢先、転機が訪れる。2013年秋、同スタリオンが「ヘニーヒューズ導入」を発表すると、ちょうど同時期に2歳デビューしたアジアエクスプレスがダートの新馬、500万で後続をぶっちぎり、続く朝日杯フューチュリティS(G1)も初芝ながら快勝。新天地へ移る父へこれ以上ないタイムリーVを捧げ、日本での人気・注目度は急上昇した。また、アジアエクスプレスは当初、ダートの2歳王者決定戦ともいえる全日本2歳優駿(Jpn1)に出走予定していたが、獲得賞金の関係で出走できなかったため、矛先を変えて朝日杯フューチュリティS(G1)に挑み、栄冠を手にした経緯もある。そうした運もしかり、父仔ともダート馬と目されていた中、芝でチャンピオンホースを送り出したことは大きなインパクトを与えた。

 現役G1馬アジアエクスプレスの飛躍もさることながら、同じくヘネシーの血を引く種牡馬ヨハネスブルグが日本でも実績を上げ、血統面でも追い風が吹いている。来春の本邦初年度産駒誕生が待ち遠しい。産駒の出来も気になるところだが、しばらくは多数の繁殖牝馬を迎え入れていくだろう。山崎さんは、「産駒は優れたスピードを受け継ぎ、短~中距離で活躍していますね。芝の重賞勝ちも決めていますし、配合次第ではクラシック・ディスタンスに適応できる馬も出していけると思います。アジアエクスプレスの故障は残念ですが、夏のレパードS(G3)では改めて強さを感じました。この馬に続いて、先々は日本産でもG1馬を出したいです。」と、意気込む。血統や産駒傾向は生産者、馬主のニーズに合ったポイントが多く、ブレイクする条件は揃っている。父同様、早々と勝ち上がれる産駒や、もちろん大器も狙えるだろう。将来は馬産地を引っ張っていく存在になるのではないか_そう読んでいるホースマンは少なくないはずだ。