ウイングアローを訪ねて~フォレブルー
青森県上北郡にあるフォレブルー(東北牧場)に、ウイングアローを訪ねた。
今年19歳になったウイングアロー。人間ならば70歳オーバーの、かなりのご高齢である。失礼ながら、おじいちゃんになった姿を想像していたのだが――実際に会ったウイングアローは、おじさんどころかまだまだ少年のような表情をしていた。「洗い場で顔をすりすりとくっ付けて来るなど、とにかく甘えん坊ですね」と、スタッフの長濱隆史さん。
隣の馬房に住む、超マイペースなメジロベイリーとは対照的に、甘え上手でいたずらっ子なのだという。例えば、放牧場に水たまりがあると、わざと中に入ってバシャバシャと水の音を響かせる。他の馬たちが水の音にびっくりしているのを見て、喜んでいるそうだ。我々がニンジンを差し出すと、ダラダラとヨダレを垂らしながら真剣に食べていた。表情も仕草も、とても19歳には見えない。“永遠の少年”という言葉がぴったりだと感じた。
現役時代は、ダートで無類の強さを誇っていたウイングアロー。勝利を挙げた競馬場は、名古屋(1998年名古屋優駿(G3))、阪神、旭川(1998年グランシャリオC(G3)、2000年2001年ブリーダーズゴールドC(G2))、中山(1998年ユニコーンS(G3))、大井(1998年スーパーダートダービー(G2))、東京(2000年フェブラリーS(G1)、2000年ジャパンカップダート(G1))と、超小回りコースでも、広いコースでも、変わらず力を発揮した。種牡馬になってからは、岩手を中心に産駒たちが頑張っている。代表産駒は、牝馬サイレントエクセル(2006年ダービーグランプリ(G1)3着)。現役では、岩手のオープン馬トーホクアロー(2013年みちのく大賞典3着)がいる。
しかし、その第2の馬生も、そろそろ終わりを迎えようとしているのだ。「本当は去年の1頭で終わりかなと思っていたんですけど、今年もうちのイチオシ、ピースチェイサー(父アグネスタキオン)に種付けしました。年齢のこともあるし、この仔が最後の仔になると思います」と、長濱さん。まだまだ若く見えるウイングアローだけれど、実年齢は19歳。これまで長い間、本当に頑張ってくれたのだ。
すでに今年の2歳も岩手で5頭デビューして、2頭(トーホクフェアリー、コンチバンブラン)が勝ち上がっている。1歳は4頭、今年生まれた1頭と、来年生まれる予定の1頭がいる。子供たちの活躍に期待するとともに、ウイングアローにはのんびりとした余生を送って欲しい。そしていつまでも、無邪気な“永遠の少年”でいて欲しいと、心から願っている。