馬産地コラム

レギュラーメンバーを訪ねて~山内牧場

  • 2014年08月15日
  • ジッとこちらを見るレギュラーメンバー
    ジッとこちらを見るレギュラーメンバー
  • 立派な体は今も健在
    立派な体は今も健在
  • 丘の上から見下ろすレギュラーメンバー
    丘の上から見下ろすレギュラーメンバー
  • 気持ち良さそうに砂浴び中
    気持ち良さそうに砂浴び中

 青森県八戸市にある山内牧場に、レギュラーメンバーを訪ねた。

 山内牧場に入って行くと、緑の放牧地が続き、なだらかな傾斜で奥に行くほど高くなっている。その丘の一番高いところから、こちらを見下ろしている黒い馬がいた。立派な馬格、凛とした佇まい、すぐにレギュラーメンバーだとわかった。季節は真夏。東北といっても気温は30℃を越え、外にいるだけで汗が噴き出してくるほどの暑さだった。しかし、レギュラーメンバーは奥の日陰ではなく、丘の頂上の辺りに陣取って、ジッとこちらを見下ろしている。近くまで行ってみると、その場所が風の通り道であることがわかった。そよそよと風に吹かれながら、のんびりと功労馬生活を送っているのだ。

 「子供たちが走ってくれているので、種牡馬を続けさせたい気持ちもあったんですけど。腰が悪くなってしまって、もし種付け中に事故でも起きたら…ということで、去年申請して功労馬になったんです」と、スタッフの高田勝己さん。種牡馬というのは、後ろ脚2本で立ち上がることを要求され、特に腰を酷使する仕事である。健康なうちに引退させるという、レギュラーメンバーを思っての決断だった。種牡馬を引退したとはいっても、去勢はしていないそう。とても賢い馬で、種牡馬にありがちな、他馬を見て急に興奮したり暴れたりすることもなく、60代半ばの女性スタッフでも扱えるという。

 「まだそんなに年じゃないし、馬格もあって、今でも立派な体ですよね。本当に賢い馬で、誰がお世話をしてくれる人間かということが、よくわかっていますね。こうやって近くで話をしていると、ちゃんと聞いてるんですよ。大人の会話がわかるんです(笑)」と高田さんが笑うと、レギュラーメンバーは「その通り!」とばかりに頷いた。

 現役時代、ダービーグランプリ(G1)(2000年)、JBCクラシック(G1)(2001年)とダートの中距離路線で活躍したレギュラーメンバー。2007年から産駒たちがデビューし、サイレントスタメン(2009年東京ダービー)、ダイナマイトボディ(2009年東海ダービー)という2頭の地方ダービー馬を輩出した。産駒たちは、中央・地方合わせて301勝(8月12日現在)を挙げる活躍を見せている。そんな中での種牡馬引退は、とても残念ではあるけれど…。何よりも、レギュラーメンバーの体を思っての決断である。この先も、穏やかに功労馬生活を送って欲しいと、心から願っている。

 取材を終え、丘を下って行く我々の姿を、レギュラーメンバーは丘の頂上から見送ってくれた。黒く澄んだ瞳と、ハリのある立派な体は、引退後11年経った今でも健在である。