カリズマティックを訪ねて~JBBA静内種馬場
1999年のアメリカ2冠馬カリズマティック(アメリカ産)を訪ねた。桜の名所、新ひだか町静内・二十間道路に構えるJBBA静内種馬場で種牡馬生活を送っている。
「食欲旺盛で健康状態は至って良好です。18歳という年齢を感じさせない馬体で、本当に堂々としています。今季の種付けも順調にこなしました。人間に対して従順で、JBBAの研修生が実習の一環で乗り運動に騎乗することもあります。普段は大人しいですが、スイッチが入ると気性の強さを見せますね。」と、紹介してくれたのは、同種馬場の中西信吾場長。夏は朝の涼しい時間帯を放牧時間とし、午後からは厩舎で過ごしている。緑にあふれた放牧地と、開放感あふれる広い厩舎でじっくりと英気を養っている。
現場での呼び名は「カリズマ」。栗毛の馬体・四肢に白いハイソックスという容姿はダイナミックで、麗しくもある。展示場でのウォーキングでは、力強く踏み込んで前進する。さすがは全米No.1ホース、対面すると内に秘めた、ふつふつとした闘志を感じさせる。
現役時代は17戦5勝。デビュー戦は意外にも最下位で、勝ち上がりには6戦を要したが、レキシントンS(G2)でのレースレコードタイム快勝を弾みに、ケンタッキーダービー(G1)、プリークネスS(G1)と鮮やかに連勝。3冠馬の称号を賭けて挑んだベルモントS(G1)では1番人気に推されたが、レース中の故障もあり、直線で失速して3着に敗れた。ゴール後、異変を感じて下馬したC.アントレー騎手は、とっさにカリズマティックの脚を支え、その死力を尽くした場面は全米の競馬ファンの心を揺さぶった。このレースを最後に引退し、その年のエクリプス賞年度代表馬、最優秀3歳牡馬に輝いた。
アメリカで種牡馬入りした後、日本での供用は2003年から。日本産の産駒は今年の2歳でちょうど10世代目となり、これまで120頭を超す勝ち馬を誕生させた。そのうち4頭が1億円を超す賞金を獲得し、中でも最も活躍しているワンダーアキュートは今年の帝王賞(Jpn1)を制し、秋のJBCクラシック(Jpn1)、チャンピオンズC(G1)で有力視されている。
「カリズマティック産駒は父同様、比較的大柄で、ダートを得意とする産駒が多いです。ワンダーアキュートは近走、G1で惜しい結果が続いていましたが、帝王賞(Jpn1)は落ち着いたレース運びで突き抜け、本当に強い内容でした。以前にも増して馬が大人になってきましたし、年齢を感じさせないタフさがあります。この秋も楽しみですね。」と、中西場長。最近ではトウショウギフトがJRA・準オープン入りし、ホッカイドウ競馬では2歳馬ブライトギャルが認定勝ちを決め、さっそく重賞へ駒を進めている。また、母の父として孫世代も勝利を収め始めている。
カリズマティックのいる馬房は同じくアメリカ2冠馬シルバーチャームの横。かつてチャーチルダウンズ、ピムリコ、ベルモントパーク競馬場を熱狂させた豪華なツーショットだ。高い人気・実績を誇る仲間の種牡馬に負けまいと、ベテランの底力を見せたいところ。中西場長は、「また新たな重賞馬を送り出していきたいですね。これからも長く期待をかけていきたいです。」と、エールを送っている。