馬産地コラム

ダイナマイトダディを訪ねて~十勝軽種馬農協種馬所

  • 2014年04月09日
  • ダイナマイトダディ
    ダイナマイトダディ
  • 年齢以上に若く、丈夫な馬
    年齢以上に若く、丈夫な馬
  • 女性からの人気が高い
    女性からの人気が高い
  • 母の父ノーザンテーストを思わせる顔の大流星
    母の父ノーザンテーストを思わせる顔の大流星

 数少ない十勝暮らしの功労馬、ダイナマイトダディ(社台ファーム生産)を訪ねた。2歳時、G1で競ったリンドシェーバーとともに、十勝軽種馬農協種馬所で余生を過ごしている。

 雪の残る放牧地で、管理する中川郁夫さんが「ダディ」と声をかけると、のそのそと牧柵に近寄ってきた。カメラを向けると、見慣れた様子で普通にしている。牧草を美味しそうに食べ、気分良さそうに歩き、時折雪の上で寝転がってみる。付近には山があり、川の水が流れる音が静かに聞こえ、都会の喧騒とは対照的な環境だ。春になると、鳥のさえずりが響き、ふきのとうが顔を出す。自然豊かな場所で朝から午後2時近くまで外に出て、自由な時間を満喫している。

 「今年26歳となりましたが、体調はずっと良いです。これまで一度も獣医にかかったことがないほど、丈夫な馬ですよ。歯も弱っていないし、食欲は十分。気性は年齢とともに穏やかになってきました。」と、中川さんは近況を伝える。複数ある放牧地は入る馬を定期的に替えていて、馬たちの気分転換を図っている。ストレスとは無縁の生活で、安定したコンディションを維持する。

 父サクラユタカオー、母の父ノーザンテースト。その血統構成はサクラバクシンオー、サクラキャンドルらと同じ。加えてダディは天皇賞(春)(G1)馬イングランディーレ、トゥナンテ、マッキーマックス、ダディーズドリームがいる実績のファミリー出身で、血筋は優れる。現役時代は素軽いスピードを発揮して6勝。中山記念(G2)、京王杯スプリングカップ(G2)を制し、芝マイル前後を得意とした。引退後は種牡馬入りし、少ない産駒の中からJRA・準オープンクラスまで出世したリトルダンサー、ホッカイドウ競馬の重賞・春霞賞(H3)勝ち馬ピクシーストーン、母の父としてシルクロードS(G3)2着のショウナンカザンが活躍した。

 見ての通り、この馬の特徴は四白流星の容姿だ。高い能力もさることながら、ゆるキャラのような愛くるしさがたまらない。中川さん曰く、来訪者は女性が断然多いという。「大きな流星に加え、4本脚に白いソックスですからね。まるでお化粧をしたような馬ですから、女性ファンが多いのも納得です。皆さんよくデジタルカメラや携帯で写真を撮っていかれますよ。ダディも嬉しそうです。」と、中川さんはそのモテっぷりを話す。現役時代、G1では最高5着という成績だったが、高齢になるまでの人気度は一流馬並ではないか。

 故障のため競走生活こそやや消化不良に終わってしまったが、ターフを去ってからは種牡馬、功労馬として長い道のりを歩いている。パンチのある馬名にふさわしく、いつ会っても変わらないロックな感じと、黄色い声を集める個性は際立っている。

 「年齢ほど老いはなく、20歳ぐらいの感じですからね。長い寿命を全うして欲しいと思います。これだけ元気でいられるのは、会いに来るファンの皆さんの力も大きいと思います。」と、中川さんはしみじみ。ファンとの対面は、ダディにとって健康の源でもあるのだろう。その派手な馬体を収めた写真は、まだまだ増えていくに違いない。