馬産地コラム

リンドシェーバーを訪ねて~十勝軽種馬農協種馬所

  • 2014年04月08日
  • リンドシェーバー
    リンドシェーバー
  • 今年26歳となる
    今年26歳となる
  • 年相応に老いてきたが、元気に放牧地を走っている
    年相応に老いてきたが、元気に放牧地を走っている
  • 孫世代からも活躍馬多数
    孫世代からも活躍馬多数

 1990年のJRA賞最優秀3歳牡馬に輝いたリンドシェーバー(アメリカ産)を訪ねた。26歳となった現在は十勝軽種馬農協種馬所で功労馬生活を送っている。

 帯広競馬場から車を小1時間ほど走らせると、彼の住まいである十勝軽種馬農協種馬所に到着する。隣接する競走馬のふるさと案内所・十勝連絡センターを経て、赤い屋根の厩舎へ向かうと、馬を管理する中川郁夫さんが案内役だ。放牧地にいたリンドシェーバーは来訪者に気付くとさっと顔を上げたが、再び牧草に視線を落とした。

 「年相応に老いてきましたが、元気に過ごしています。歯が弱ってきたので、柔らかい草を与えています。気性は少し頑固になってきました。馬が若い頃の感覚を覚えているみたいで、言うことを聞かない体の状況に納得いかない、というような感じです。ただ、長い間種付けをしてきた馬ですし、丈夫な部類だと思います。」と、中川さんは紹介する。厳しい冬に備えた全身の毛はもさもさと伸びていて、生命力を感じさせる。

 それは海からやってきた脅威の力だった。通算成績6戦4勝。現役時代のハイライトとなった朝日杯3歳ステークス(G1)では、現在一緒に暮らしているダイナマイトダディらを下し、マルゼンスキーのレコードを破った。もっともっと彼の走りを見たかったが、残念ながら1991年春に故障のため引退。早々と示したポテンシャルの高さと、名種牡馬アリダーを受け継ぐ血統に期待が注がれた。

 1992年から日高スタリオンステーションで種牡馬入りし、2011年まで20シーズンに渡って交配を続けた。晩年は十勝に移動し、十勝産馬を含めて900頭を超す産駒が誕生した。JRA重賞馬としてギャラントアロー、サイコーキララ、ルスナイクリスティ、レインボークイーンを送り出し、母の父としてはエンジェルツイート、オースミグラスワン、オースミハルカ、オオエライジン、フィールドルージュらが活躍した。芝の短距離馬もいれば、パワー勝負のダート馬もいて、バラエティに富んだ顔ぶれが特徴的だ。

 「種付けはとても前向きで、上手かったです。父の気の強さが、子孫へプラスに働きましたね。あらゆる血統との交配で結果を出しましたし、いろいろなタイプが生まれています。」と、中川さんは嬉しそうに資料に目を通す。

 最近ではもっぱら産駒よりも孫世代の奮闘が目立っている。昨年はシャイニープリンスが富士S(G3)で3着、ミータローが北海優駿(H1)を制し、この春からはマコトスパルビエロがイーストスタッドで種牡馬生活を始めた。なおも続く明るいニュースに、中川さんも感心しきり。その底力に舌を巻いている。

 「血統表に長く名前が残ることは何よりです。リンドを見学に来るファンは玄人のような方が多くて、皆さん、産駒について本当に詳しいのですよ。私もその都度、この馬の残してきた実績を再確認します。これからも子孫の活躍を楽しみしています。」