馬産地コラム

エアジハードを訪ねて~十勝軽種馬農協種馬所

  • 2014年04月03日
  • エアジハード
    エアジハード
  • 種馬所での呼び名は「エアジ」
    種馬所での呼び名は「エアジ」
  • 全国からファンが訪れている
    全国からファンが訪れている
  • 今季も昨年並に種付けをする予定
    今季も昨年並に種付けをする予定

 中川郡幕別町にある十勝軽種馬農協種馬所へエアジハード(社台ファーム生産)を訪ねた。

 十勝に来てから丸2年が経過し、3シーズン目を迎えた今年。春が近づいてきた放牧地で、気分良さそうに来訪者の声を聞いている。

 「ようやく暖かくなってきて体調は良いですね。1月末に腹痛をしましたが、数日で治りました。昨年もやっているんですよ。どうも冬の気候に差しかかる時に体調を崩しやすいみたいです。来年20歳となりますが、心身はだいたい年相応な感じですね。」と、近況を話してくれたのは、同種馬所で馬の管理をする中川郁夫さん。食欲旺盛な馬で、飼い葉時間が迫る集牧の際には、きまって出入口ですましている。

 「人間で言うとA型みたいなタイプでね。本当に賢いですよ。ちょっと飼い葉の時間がズレると、カーッとなりますから。他の馬ならそんなことないのですがね。今、何時かわかっているみたいに行動しています。」

 キングヘイロー、グラスワンダー、シーキングザパール、ブラックホークらとしのぎを削った現役時代を知るファンは、今なお遠く十勝へ足を運んでいる。若き日の、黄色と青のメンコで隠れがちだった素顔には、いちょうのような白い星があって、500kgを超す馬体は雄大なままだ。

 「エアジに会い来る皆さんは、本当にじっくり見ていかれますよ。案内していると、それぞれの愛情や思い入れが伝わってきますね。現役時代は関東馬でしたが、西の競馬場でも活躍したこともあり、京都や名古屋から来るファンも多いです。大学の頃に競馬を見ていて、好きになったという話も聞きましたね。」中川さんは来場者への案内もベテランで、誰が来たかすらすらと思い返せる達人だ。

 長い種牡馬生活は胆振・日高を経て十勝へ。一昨年は8頭、昨年は7頭と交配し、今年も昨年並の交配を予定している。「今年の種付けは4月半ばからになりそうです。サンデー系牝馬が中心ですね。」と、中川さん。父仔で安田記念(G1)制覇を果たしたショウワモダンをはじめとし、産駒は芝での好成績が目立つが、BMSとしてはダートでも良い結果が出始めている。

 交配頭数こそ1ケタに減少してきたが、今も昔もミラクルを起こす種牡馬はいる。何せ世界最高レベルの争いとも言えるJRA・国際G1勝利を産駒実績として残しているのだから、その秘めたる可能性は侮れない。中川さんも当然、そのチャンスを意識している。「何とか十勝産で、大きな土俵に上がっていける産駒を出していきたいです。」