馬産地コラム

ジャングルポケットを訪ねて~ブリーダーズ・スタリオン・ステーション

  • 2014年02月21日
  • ジャングルポケット
    ジャングルポケット
  • 3歳時は共同通信杯(G3)をステップに始動した
    3歳時は共同通信杯(G3)をステップに始動した
  • 新しい環境にもすっかり慣れ、体調は良好
    新しい環境にもすっかり慣れ、体調は良好
  • 種牡馬展示会でのジャングルポケットと佐々木司さん
    種牡馬展示会でのジャングルポケットと佐々木司さん

 2001年の日本ダービー馬、ジャングルポケット(ノーザンファーム生産)を訪ねた。日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションに移動してから一年が経過し、新しい環境にもすっかり慣れた様子でいる。

 「体調自体は安定して良いです。病気することもなく、飼い葉は残さず食べますし、手のかからない馬ですね。年が明けて16歳。種牡馬として充実期にいると思います。」と、近況を話してくれたのは、同種馬場の佐々木司さん。若くしてこの道に入り、およそ10年のキャリアを経て任された一頭がジャングルポケットだった。一年が経過し、両者の間柄は知り合いから友達になった。呼んでいる愛称は「ポッケ」。流行りのアプリケーションを使って話すことはできないが、何が好きで、何が嫌なのか、日々の付き合いで少しずつわかってきた。信頼関係が深まると、手入れの時にペロッと舌を出したり、甘えたりする。プライドの高い面もあれば、そうした可愛らしいギャップもポッケのキャラクターとして上書きされている。

 「格好良い馬だな、というのがここで会った時の第一印象でした。これだけの馬を担当することができて、本当に誇らしく思っています。まだまだ勉強しなければならないことは多いですが、馬自身の性格については、だいぶ把握できてきました。結構他の馬を気にするタイプで、厩舎の出し入れの際は注意しています。見学公開では、ファンの方から質問を受けることもあり、人気の高さを改めて感じています。」

 現役時代は13戦5勝。日本ダービー(G1)、ジャパンカップ(G1)制覇をはじめ、出世レースとして知られる札幌3歳S(G3)、トキノミノル記念・共同通信杯(G3)を制した。ラジオたんぱ杯3歳S(G3)と皐月賞(G1)では、アグネスタキオンに先着を許したものの、クロフネ、ステイゴールド、テイエムオーシャン、テイエムオペラオー、ナリタトップロードといった一流馬を破って勝利を収め、2001年の年度代表馬・最優秀3歳牡馬に輝いた。とりわけ東京コースで威力を発揮し、その傾向は産駒にも受け継がれた。

 2003年から種牡馬生活を始め、ニュージーランド、オーストラリアでのシャトルも経験した。産駒は8世代がデビューし、460頭以上の勝ち馬を誕生させている。そのラインナップは質・量ともに優秀で、父仔クラシック制覇を果たしたオウケンブルースリ&トールポピー、天皇賞馬ジャガーメイル&トーセンジョーダン、牝馬G1馬アヴェンチュラ&クィーンスプマンテと、G1馬だけでも数多い。現役では今年幸先良いスタートを切ったヴェルデグリーンや、名牝スカーレットブーケの孫ダイワファルコンが奮闘中。やはりと思わせるのは、父同様に直線でグングンと伸びる産駒の特徴で、広いコースで顕著に好結果が導かれている。また、産駒の獲得賞金のベスト20に、母の父サンデーサイレンス系の馬が半数以上を占めていることも強調材料だ。

 「産駒実績が示す通り、サンデーサイレンス系肌馬との相性は抜群ですね。その点を意識して配合されている生産者の方は多いです。種付け自体は、お手本になるぐらい上手な馬で、受胎率も上々。だいたいの繁殖牝馬が、少ない回数の種付けで受胎しています。」と、その仕事ぶりは冴えわたる。種牡馬としても看板は分厚く、2013年は122頭の繁殖牝馬を集めた。

 放牧地ではステイゴールドの隣りが彼のエリアとなっている。夏~秋の見学公開日には、全国から多くのファンが会いにやってきた。冬季は午前中を放牧時間とし、それから引き運動をしている。厳しい冬の真っ只中ゆえ、寒い日は馬服を着て過ごしている。

 「雪が降る季節も元気いっぱいですね。今後もしっかり種牡馬生活を支えていきたいです。産駒の出走は毎週必ずチェックしています。これまで素晴らしい産駒実績を残していますが、ダービー(G1)はまだです。父仔制覇を成し遂げたいですね。」と、野望を語る佐々木さん。「長い直線」と「サンデー系」、近代競馬のニーズに合った魅力を携え、これからもホースマンの希望を集めるだろう。若手種牡馬の台頭にも負けず、新たな芽の息吹は、あのダービーの歓声をよみがえらせるに違いない。