馬産地コラム

セラフィックロンプを訪ねて~守矢牧場

  • 2014年02月03日
  • セラフィックロンプ
    セラフィックロンプ
  • 牧場では「ロンプ」と呼ばれている
    牧場では「ロンプ」と呼ばれている
  • 今年はエンパイアメーカーを受胎している
    今年はエンパイアメーカーを受胎している
  • 初仔は父アドマイヤムーンの牡馬
    初仔は父アドマイヤムーンの牡馬

   牝馬による戦い・愛知杯(G3)を2度制した重賞馬セラフィックロンプ(守矢牧場生産)を訪ねた。現在は生まれ故郷に帰り、繁殖生活を送っている。

   牧場の看板を曲がってすぐの放牧地へ行くと、出産を待つ繁殖牝馬たちが草を食んでいる。その群れの中に彼女はいた。父マンハッタンカフェ譲りともいえる立派な馬格は相変わらずで、青鹿毛の馬体はサンデーサイレンス系らしい。冷たい風にたてがみをなびかせ、カメラに視線を飛ばす。取材者を案内する守矢正嗣さんが「ロンプ」と声をかけると、すぐに耳を立てて寄ってきた。

   「昨年初仔を生んでからも、体調面は何の問題もありません。初めての子育てでしたが、仔馬の面倒をよくみていました。離乳後も数日経つと受け入れて、落ち着いてきました。馬同士では強い方で、周りは降参してしまうほどですね。」と、近況を話す声が明るい。

   現役時代は37戦5勝。芝中距離を得意とし、3歳春のデビューから一歩一歩階段を上るように成績を伸ばした。4歳春に1000万クラスを卒業すると、格上挑戦した愛知杯(G3)で16番人気の低評価を覆して優勝。重賞馬の仲間入りを果たし、その後は主に牝馬重賞で活躍し、6歳時にマーメイドS(G3)と府中牝馬S(G3)で2着。3度目の出走となった愛知杯(G3)では積極果敢な競馬でライバルの追撃をしのぎ、重賞2勝目を飾った。当時、デビュー2年目の宮崎北斗騎手に重賞勝利とG1初騎乗をもたらし、マンハッタンカフェ産駒の牝馬では、レッドディザイア、フミノイマージンに次ぐ高い賞金を獲得した。

   引退後、故郷の風にもすっかり慣れ、第2の馬生は幕を開けた。初年度の交配相手はアドマイヤムーン。昨年4月19日、元気な牡馬を出産した。すでに離乳し、母仔はそれぞれの道を進んでいる。初仔について守矢さんは、「初仔の分、やや小柄ですけど、かたちは良いし、バネのありそうな馬です。普段は穏やかな気性ですが、内に秘めたものを感じますね。ムダなことをしないし、時々気合いのスイッチが入るあたりは、母に似ています。」と、特徴を伝える。放牧地での跳ねるような走りは小柄さを感じさせない。今年のセレクトセール上場を予定している。

   すくすくと育つ息子と離れた場所で、セラフィックロンプはじっくりと2番仔の出産準備を進めている。現在、お腹の中にいる仔は、馬産地で抜群の人気を誇るエンパイアメーカーを父に持つ。

   「次、どの馬を付けようか悩んだ末に決めました。エンパイアメーカーは前々から注目していた種牡馬で、日本産デビューは今年になりますが、時々FAXで送られてくる海外産駒の最新情報等も踏まえ、やっぱり良いなと思いました。1回で受胎しましたし、今度はダート適性の高い仔も狙えるかもしれませんね。楽しみです。」と、守矢さんは声を弾ませる。

   無事に初仔を生み、順調に繁殖生活を踏み出したセラフィックロンプ。その道の先には、守矢牧場の“かまど馬”だったカタクラヒメの名が出てくる。2頭のオークス出走馬をはじめ、オープン馬、特別勝利馬を次々に送り出した繁殖牝馬がカタクラヒメで、守矢さんはその背中を追うような、柱となる馬になって欲しいと願っている。

   「このまま順調に繁殖生活を送っていきたいです。ちょっと気ままなとことはありますが、繁殖牝馬としては優秀なスタート。牧場にいたカタクラヒメのような結果を出せたら嬉しいですね。血統や競走成績から距離をこなせる背景がありますし、クラシックを意識できるような馬、母と同じぐらい走ってくれる馬を生み出していきたいです。」