馬産地コラム

アドマイヤオーラを訪ねて~優駿スタリオンステーション

  • 2014年01月10日
  • アドマイヤオーラ
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 外れた馬券はどんなに言い訳を重ねても、当たり馬券にはならない。もちろんわかってはいるけれど、競馬場の帰り道、ひとつふたつグチを言いたくなることがある。あの馬は本当ならもっと、と。

 例えばアドマイヤオーラ。安平町・ノーザンファームの生産馬で父アグネスタキオン、母ビワハイジ。説明不要の超良血馬であり、芝で他を圧倒するキレ味をもっていた。それは確かな能力の証しだが、3年9か月間の競走生活で4度のG1挑戦もタイトル獲得には至らなかった。展開に 泣いた皐月賞(Jpn1)。日本ダービー(Jpn1)はウオッカの前に3着という結果に終わったものの、後にレース中の骨折が判明している。振り返れば、敗れたレースにはいつも理由があった。そして、通算16戦4勝という競走成績の中にはウオッカを負かした京都記念(G2)、ダイワスカーレットを負かしたシンザン記念(Jpn3)が含まれる。そんな事実を前にすると、つい考えてしまうのだ。アドマイヤオーラは本当ならもっと――と。

 11年度から種付けを開始して、次の春が4シーズン目。アドマイヤオーラは間もなく10歳になろうとしている。放牧地では弾むような脚さばきを見せ、現役時代を彷彿とさせる。「だいぶ種牡馬らしい体つきになって、貫禄が出てきましたね。性格的には来た当初と変わらない、我がままなお坊ちゃんのままですけれど」と笑うのは優駿スタリオンステーションの山崎努主任だ。ピリリとした気性は走る馬に共通するもの。その馬っぷりの良さはこれまで国内外の一流馬を何頭も触ってきた山崎主任の目にも、特別なものに映るという。

 「この血統、この馬体ですからね。もしG1タイトルを持っていたら、この種付料(2014年度は受胎条件30万円、出生条件50万円)にはなっていないのでは。14年の春にはいよいよ初年度産駒がデビューします。父のように芝でキレ味を発揮する大物が出てほしいですね。また、それを期待できるレベルの種牡馬だと思っています」(山崎主任)

 供用2年目、3年目と配合相手の数はやや減少しているが、この世界は結果がすべて。1頭、2頭と産駒が走り、状況が180度変わることも珍しくない。普段はあまり強い言葉を発しない山崎主任が、「本当、楽しみですよ」と力を込めた。

 厳寒の冬を超えれば、やがて命が芽吹く春。『アドマイヤオーラは本当ならもっと――』の続きが間もなく始まろうとしている。