馬産地コラム

シンボリクリスエスを訪ねて~社台スタリオンステーション

  • 2013年12月22日
  • シンボリクリスエス
    シンボリクリスエス
  • シンボリクリスエス
    シンボリクリスエス
  • シンボリクリスエス
    シンボリクリスエス

 なぜだろう。暮れの中山競馬場には「緑、白襷」の勝負服が良く似合う。
 スピードシンボリ、シンボルルドルフ、そして、シンボリクリスエス。

 そのどれもが強い内容の勝利だったが、もっとも衝撃的だったのは2003年の暮れも押し迫った12月28日。この日、レース終了後に引退式が予定されていたからではない。

 12頭たてながらジャパンカップを圧勝したタップダンスシチーに菊花賞馬ザッツザプレンティ、当時まだ未完の大器といわれたゼンノロブロイなどが顔を揃えたグランプリ。それでも1番人気はファン投票でも1番たくさんの表を集めたシンボリクリスエスだった。

 どうしても逃げたい馬はタップダンスシチーのみ。好スタートを切ったのはアクティブバイオだったが、タップダンスシチーがゆっくりと加速してハナを奪う。しかし、どうしたことかザッツザプレンティとアクティブバイオが強引にペースをあげて後続を引き離しにかかる。ポツンと離れて前年の2着馬タップダンスシチー。さらにリンカーンとゼンノロブロイが続く。馬群がばらけ、風景がどんどん広がる。広がった風景が急速に縮まりを見せたのは3コーナー手前あたりからだったが、4コーナーをまわるとまた急速に風景が広がった。

 9馬身というのはグレード制制定後、良馬場で行われたG1競走における最大着差でもあった。
 強くて、速くて、そして美しいシンボリクリスエスがそこにいた。

 あれからちょうど10年の月日が流れ、シンボリクリスエスの仔エピファネイアが完璧なレース運びで菊花賞に勝った。バンデとネコタイショウがグングン前を引っ張り、展開にも動じることないそのレースぶりは、場所と距離こそ違え、父のレースを彷彿させるものでもあった。

 そのエピファネイアの勝利に際し、社台スタリオンステーションの徳武英介さんは「やっと、シンボルクリスエスらしいシンボリクリスエスの産駒が出てきてくれましたね」と嬉しそうな顔を見せてくれた。

 「芝、ダートを問わずに驚異的なペースで勝星を積み上げていくシンボリクリスエスは素晴らしい種牡馬だと思います。今まではサクセスブロッケンやアルフレード、それからストロングリターンのように、芝ダート両方の1600㍍の距離でG1勝馬を出しており、それはそれで種牡馬としては素晴らしいことなのですが、やはり自身と良く似た子を残し、その血をつないでいくことが求められていると思います。エピファネイアの場合は母であるシーザリオもパワーで押し切るような馬でした。両親のどちらにも良く似ていると思いました」と表現している。

 今回、そのエピファネイアはエントリーされていないが、いつの日かまたこの馬の血を引く優秀なサラブレッドが暮れの中山競馬場を熱くさせることを願いたい。