馬産地コラム

グランプリエンゼルを訪ねて~上村清志牧場

  • 2013年07月17日
  • グランプリエンゼル
    グランプリエンゼル
  • 今年はキングズベストを交配した
    今年はキングズベストを交配した
  • 環境にも慣れ、落ち着いている
    環境にも慣れ、落ち着いている
  • 食欲旺盛で、馬体重は500kg近い
    食欲旺盛で、馬体重は500kg近い

   函館スプリントステークス(G3)の勝ち馬、グランプリエンゼル(上村清志氏生産)を訪ねた。現在は故郷、上村清志さんの牧場で繁殖生活を送っている。

   昨年のカペラステークス(G3)出走を最後に引退し、繁殖牝馬になるため、生まれ故郷の三石には12月中旬に到着した。いつにも増して寒かった冬を乗り切り、現在は上がり馬(繁殖供用開始馬)たちと一緒に放牧されている。青々とした放牧地に、四白栗毛の馬体が映えている。

   「牧場に来た当初は少しカリカリした様子を見せていましたけど、今ではすっかり落ち着いて、環境には慣れました。体重は少なくとも20kgぐらいは増えましたね。体型にも幅が出てきました。」と、近況を語ってくれたのは、同牧場の上村清志さん。寒いときも、暑いときも食欲十分な馬で、馬房では好物のリンゴを美味しそうに食べるという。

   現役時代は芝短距離~マイルで活躍したグランプリエンゼル。やや小柄な馬体ながらも、牡馬相手に気を吐いた。通算41戦5勝をマークし、重賞Vは函館スプリントステークス(G3)のみだが、NHKマイルカップ(G1)ではジョーカプチーノ相手に3着、京阪杯(G3)ではロードカナロア相手に2着に好走した。

   G1馬を脅かしたスピード能力は、繁殖牝馬として仔にどう受け継がれるのか。未来に向かって、お腹の中には初仔を宿している。「今年はキングズベストを交配することになり、無事受胎しました。ある程度、距離のこなせる馬を生み出せるでしょう。」と、上村さんはイメージを描く。凱旋門賞馬、日本ダービー馬を出している種牡馬とのカップリングで、クラシック制覇を意識している。

   繁殖牝馬としての第一歩を踏み出し、初めての夏を迎える。北海道の短い夏を告げる風を受けながら、その眼差しは優しい。来年の今頃は子育ての真っ最中となるだろう。上村さんは、「競走馬として重賞を勝つことができましたので、今度は繁殖牝馬としても結果を出したいですね。目標はやはりG1です。」と、期待をかける。牧場自慢の血統馬で、仕掛けの手応えは十分だ。どこかのパドックで、彼女の“可愛く、強い”記憶がよぎる日まで、あと数年。その日、「母のレースも見ていたんだ」と、誇らしげに話すファンは少なくないだろう。歩みは今、着実にその場面へ動き出している。