馬産地コラム

スズカフェニックスを訪ねて~アロースタッド

  • 2013年06月25日
  • スズカフェニックス
    スズカフェニックス
  • 栗毛の馬体が新緑に映える
    栗毛の馬体が新緑に映える
  • 種付けは上手にこなしている
    種付けは上手にこなしている
  • 産駒のG1制覇で交配頭数増加
    産駒のG1制覇で交配頭数増加

 アロースタッドで種牡馬生活を送るスズカフェニックス(稲原牧場生産)を訪ねた。初年度産駒が昨年デビューし、その中からマイネルホウオウがNHKマイルカップ(G1)を優勝。種牡馬として幸先良いスタートを切っている。

 「体調は良く、今季も順調に種付けをこなしています。さっそくG1馬を出すことができて、本当に嬉しい限りです。競合相手が多いサンデーサイレンス系種牡馬にあって、早々にこの実績は大きいですね。おかげさまで、交配頭数は増えています。アロースタッド繋養種牡馬としては、スズカマンボも産駒が優駿牝馬オークス(G1)を勝ちましたし、嬉しい話題が続いています。」と、声を弾ませるのは同スタッドの本間一幸主任。種牡馬の仕事を増やすには、産駒の走りが全てと言っても過言ではない。同じく3歳G1馬を送り出しているローエングリン擁するレックススタッドとともに、新ひだか町静内・二十間道路界隈の種付場は、上半期G1での好成績を受けて馬運車の往来に勢いがついている。

 父サンデーサイレンス、母ローズオブスズカ、母の父Fairy Kingという血統のスズカフェニックスは、2002年生まれの11歳。伯父にドクターデヴィアス、シンコウキングがいる。同世代にはディープインパクト、シーザリオ。3歳2月に初勝利を挙げ、夏に500万クラスを卒業。それから長い休養を経て4歳5月に復帰し、クラスが降級し再び500万クラス、1000万クラス、1600万クラスを突破し、秋にはオープン入りを果たした。5歳1月に東京新聞杯(G3)を制し、重賞馬の仲間入りを果たすと、3月に高松宮記念(G1)に駒を進め、G1初挑戦にして見事勝利を収めた。秋はこの年に発生した馬インフルエンザの影響で栗東への帰厩が遅れたため調整も遅れた影響もありスプリンターズS(G1)9着、マイルチャンピオンシップ(G1)は善戦するもダイワメジャーの3着に敗れた。しかし、暮れの阪神カップ(Jpn2)を優勝し2007年を勝利で締めくくった。その後も芝短距離~マイルで快走を繰り返し、とにかく堅実な馬で、前半は流れによって好位、中団、後方で立ち回り、終いは確実に伸びる。勝ち馬から1秒以上離されて負けたレースは、生涯29戦のうち、僅かデビュー戦だけだった。

 種牡馬としては初年度に59頭と交配し、その後は30頭前後で推移している。マイネルホウオウがG1を勝ったことで、今季はすでに過去2年を上回る数字をマークしている。

 「種付現場での苦労は少ないですね。優等生の部類だと思います。初年度の経験から頭数は十分こなせますし、これからラストスパートです。」と、本間主任。サンデーサイレンス直仔らしく、気性の激しい面はあるものの、利口な面もあるという。シーズンオフに入る7月上旬まで、あと少し踏ん張りどころだ。

 成長の点ではやや遅咲きの感があった父に対し、マイネルホウオウは3歳でのG1制覇で、産駒は父よりも早い活躍が見込めそうだ。「初年度産駒は2歳戦でも良い走りを見せましたし、芝向きのスピードを受け継いでいます。今の時代に合った種牡馬だと思います。」と、本間主任は胸を張る。スズカフェニックス自身、オープン入りするまでは芝1800m~芝2000mでも勝利していることから、幅広い距離適性を持った産駒も見込める。短距離G1馬ながら、クラシックを意識できる種牡馬として考えている生産者も少なくないのではないか。

 「マイネルホウオウに続いて、2頭目、3頭目と重賞馬を続けていかないとなりませんね。G1馬を出したからと言って、舞い上がっていられません。何とか次の結果を出していきたいです。」と、本間主任は気持ちを切り替えるように、「次」という言葉に力を込めた。栄冠の先にあるものは、もう一つの栄冠。父仔G1制覇のシーンは、まだ始まりに過ぎない。