ティンバーカントリーを訪ねて~レックススタッド
長らく種牡馬生活を送るベテラン、ティンバーカントリー(アメリカ産)を訪ねた。21歳となった今年も、若手に負けまいと種付けに励んでいる。
「コンディションは変わらず良いですね。食欲旺盛な馬で、放牧地では夢中で草を食んでいます。雨の日なんかでも木の下で雨宿りしながら、黙々と食べています。疲れたらゴロンと横になって、よく寝ていますよ。自分自身でしっかり、体調管理ができる馬なのだと思います。ムダなことは一切しませんね。」と、最近の様子を語ってくれたのは、レックススタッドの泉山義春場長。牧場での呼び名は「ティンバー」。同じ屋根の下で暮らす1歳下のエイシンサンディと並び、同スタッドでは古株となる。場長はこの2頭を“レックススタッドのボス”と、紹介する。
現役時代はアメリカで12戦5勝。2歳6月のデビューで、その年の秋にシャンペンS(G1)、ブリーダーズCジュヴェナイル(G1)を快勝し、全米2歳牡馬チャンピオンの座に輝いた。3歳時、日本からスキーキャプテンが参戦したケンタッキーダービー(G1)では3着に敗れたが、続く2冠目のプリークネスS(G1)ではダービー馬サンダーガルチにリベンジを果たし、見事クラシック制覇を飾った。残念ながらその後屈腱炎を発症し引退。日本で種牡馬入りとなった。
ここ数年、交配頭数は減少しているものの、種牡馬としてのキャリアは20年近い。これまでデビューした産駒は1,000頭を超え、他国へのリースも経験。2003年には232という交配頭数を記録している。主な産駒には、芝、ダートで通算G1・7勝をマークしたアドマイヤドンをはじめ、盛岡・ダービーグランプリ(G1)を制したムガムチュウ、芝中長距離路線で実績を残したトウショウナイト、海外の産駒からはアメリカ、オーストラリアのG1馬も出ている。今年はホッカイドウ競馬出身の牝馬、カイカヨソウが南関東3歳戦線を沸かせている。
「産駒は芝ダート問わず、活躍期間が長いことが特徴ですね。2歳戦で好結果を出した馬でも、しぶとく強く成長していきます。距離適性も幅広く、芝、ダート、ジャンプレースでG1馬を出している希有な種牡馬です。」と、泉山場長は誇らしげに語る。
最近では母の父としても、馬名の露出を増やしている。牝馬G1に駒を進めたシンメイフジやマイネオーチャード、兵庫チャンピオンシップ(Jpn2)を圧勝したコパノリッキー、出世レース・青葉賞(G2)で好走したラストインパクトらがそうだ。とりわけ、父がサンデーサイレンス系×母がティンバーカントリー肌という配合に出世馬が多く、前述の馬はまさにその例。確たるニックスとして広まる日も近いのではないか。
どんなに素晴らしい競走成績であっても、誰もが認める良血馬であっても、結果が出なければ種牡馬の道は脆くなっていく。早期引退を余儀なくされている種牡馬が少なくないサバイバルの中で、これほど長く種牡馬の顔を張っていることは、ティンバーカントリーの凄みだろう。放牧地ではひたすら首を下げて、ひたすら草を食べている。疲れたら、寝る。近くの放牧地にいるスペシャルウィークが機敏にダッシュをしても、意に介さない。大変な競争社会だけど、マイペースで頑張っていこうよ、という声が聞こえてきそうだ。
「高齢の域に入っているので、この先は一年でも長く、健康に種牡馬生活を送っていけることを考えていきたいですね。母の父としても重賞馬を出せていますし、ティンバーの底力に期待しています。」と、泉山場長は愛着を込めて、声をかけた。