馬産地コラム

タニノギムレットを訪ねて~社台スタリオンステーション

  • 2013年05月24日
  • タニノギムレット
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    タニノギムレット

 第69回日本ダービー優勝馬。そして、長い歴史の中で唯一の父娘制覇を成し遂げたタニノギムレットはいま、安平町の社台スタリオンステーションで種牡馬生活を送っている。

 馬が父娘制覇なら、馬主である谷水信夫さん、雄三さんも父子でダービー制覇。それも2回ずつというから驚きだ。過去79回の歴史の中でダービー出走馬は1726頭。その数字がダービーというレースの重さを示している。父仔で出走するだけでも大変なことなのに、タニノギムレットの周りにはダービーがいっぱいだ。

 しかし、タニノギムレットがダービーウイナーとなるまでは、簡単な道のりではなかった。2歳8月にデビューしたものの骨折の憂き目にあって約4か月半の休養を余儀なくされている。復帰後、未勝利戦から重賞3連勝の離れ業をやってのけたが、1番人気に支持された皐月賞(G1)は小回りコースで行われる多頭数競馬に苦しめられて3着に敗れ、続くNHKマイルC(G1)ではレース中に致命的な不利を受けて3着。勝利の女神から見放されたかのような印象を受けたが、ダービー(G1)では後方から前をゆくシンボリクリスエスをあっさりとつかまえて優勝している。

 ダービーの声を聞くと「黄、水色襷」の勝負服には目に見えない力が備わる、そんな印象を受けた。

 そんなタニノギムレットは14歳。種牡馬として、最も充実する年齢に差し掛かってきた。

 「ブライアンズタイムという不世出の名種牡馬を父に持つ日本ダービー馬」加えて「サンデーサイレンスの血を持たないG1ウイナー」の血を求める生産者は多い。社台スタリオンステーションでも「マイルから2400mくらいの距離をもっとも得意とする産駒が多いことから、大物を狙える種牡馬と考えています。ウオッカの父という事実は歴然としたものですし、出来ることであればウオッカのような馬で後継種牡馬となるような馬を出してほしい。その可能性は大いにあると思っています」と高い評価を与え「今の、そしてこれからの時代に必要な血脈」と期待している。

 残念ながら、タニノギムレットの産駒で第80回日本ダービーに駒を進めた馬はいないが、多くの人が待っているのは、その血を継承し、後世に伝えることができる馬だ。そんな馬の出現を心待ちにしたいと思う。