馬産地コラム

オンファイアを訪ねて~優駿スタリオンステーション

  • 2013年03月26日
  • オンファイア
    オンファイア
  • 全兄ディープインパクトより大きな馬体
    全兄ディープインパクトより大きな馬体
  • 気の荒さはなく、賢い
    気の荒さはなく、賢い
  • ウキヨノカゼの重賞制覇で、人気上昇中
    ウキヨノカゼの重賞制覇で、人気上昇中

 牝馬クラシックにつながる重賞・クイーンカップ(G3)を制したウキヨノカゼの登場で、改めて存在感を示している良血種牡馬、オンファイア(ノーザンファーム生産)を訪ねた。同い年のソングオブウインドとともに、優駿スタリオンステーション(新冠町)で種牡馬生活を送っている。

 小高い場所にある種牡馬厩舎の奥に、オンファイアの放牧地がある。朝もやの中で会いに行くと、後ろからふいに視線を感じた。隣のローレルゲレイロだった。目で挨拶をする。オンファイアと言えば_皮膚の薄い、すっきりとした好馬体。上背があり、俊敏な動きを見せる。人を威嚇するようなことはなく、気の荒さはない。血統馬らしい、先天的な上品さを漂わせている。

 「体調面は安定していますね。普段は大人しくて扱いやすいです。サンデーサイレンス系らしく、種付けは上手。気持ちの切り替えがしっかりしていて、賢い馬だと思います。」と、紹介してくれたのは、同スタリオン主任の山崎努さん。シーズン中は早朝から放牧し、朝、昼、夕方に種付けが入れば、その都度こなしていく。馬産地のスタリオンに連日、ズラーっと馬運車が並び出すのは、だいたいゴールデンウィーク前後。これからが最盛期だ。

 現役時代のオンファイアは3戦1勝。全兄ディープインパクトの神戸新聞杯(G2)優勝から3週間後、東京の2歳新馬戦で初陣を迎えた。3着に敗れたが、続く2歳未勝利戦で3馬身差の快勝。3戦目には出世レースの一つ、東京スポーツ杯2歳ステークス(G3)に挑み、後のG1馬フサイチリシャール、メイショウサムソンに次ぐ3着に入った。ハイレベルの重賞で好走したことからも、その秘めたる能力、将来への可能性が膨らんだ矢先、右前脚に屈腱炎を発症。日本最強馬の血を求める声に応えるべく、早期引退、種牡馬入りとなった。

 初年度は153頭と交配し、2年目から優駿スタリオンステーションで繋養している。ウキヨノカゼは3世代目の産駒で、現役時代、不完全燃焼に終わった父の無念を晴らしている。「待望の産駒重賞制覇となりました。ごまかしのきかない東京コースながら、強い勝ちっぷりでしたね。クラシック本番での走りが楽しみです。」と、山崎さんも喜んでいる。他の産駒には小倉2歳S(G3)で2着に入ったシゲルキョクチョウなどがおり、芝ダートのマイル前後を得意とする産駒が目立つ。山崎さんは、「全体的にはスピードに勝ったタイプが多いようですね。仕上がりが早く、2歳戦から良い走りを見せています。」と、産駒像を浮かべる。

 オンファイア自身、現役時代は492kg~500kgで出走していて、全兄ディープインパクトより馬体は大きい。種牡馬として、小柄な牝馬との掛け合わせには効果的だろう。近年の種付料は20~30万円と低価格ながら、産駒の中からは1,000万円を超す市場取引馬も飛び出している。山崎さんは、「若くて元気一杯ですし、まだまだこれからの種牡馬です。昨年はやや交配頭数が落ち込みましたが、巻き返したいですね。」と、意気込んでいる。燃えるような娘の走りは、父にとって春一番の追い風。種付場を眼下に見て、虎視眈々と出番を待つ横顔は、どこか自信の色を帯びている。