馬産地コラム

グランリーオを訪ねて~ローリング エッグス クラブ ステーブル

  • 2013年03月08日
  • グランリーオ
    グランリーオ
  • たっぷりの干し草を食べて満足そう
    たっぷりの干し草を食べて満足そう
  • 冬は地面が滑りやすく、注意深く放牧地へ
    冬は地面が滑りやすく、注意深く放牧地へ
  • 馬産地の中でも、とりわけ静かな場所
    馬産地の中でも、とりわけ静かな場所

 2005年の中日新聞杯(G3)の勝ち馬、グランリーオ(藤沢牧場生産)を訪ねた。昨年、乗用馬生活を引退し、新ひだか町静内にあるローリング エッグス クラブ ステーブルへ移動。のんびりと功労馬生活を送っている。

 きれいに除雪された道を歩いて、グランリーオのいる放牧地へと向かう。周りに建物は一切なく、あるのは山と小さな川。冬の自然には虫もいないし、動物もキタキツネぐらいか。聞こえてくるのは風の音。その風もやんでしまえば本当に静かだ。街の喧騒を忘れさせてくれる。

 「グランリーオの生産者で、亡くなった藤沢哲雄さんが生前話していたんです。重賞をとってくれた馬だし、グランリーオが引退したら、この静かな牧場で老後を送らせてあげたい_と。」そう話してくれたのは、同牧場の宮本直美さん。いつもの調子で“グラン”と呼ぶと、ひょいとこちらに顔を向けてくれた。雪の上にたんまりと用意された干し草を、もしゃもしゃと食べている。好奇心なのか、喉が渇いたのか、時折真っ白な雪をなめる。強烈な寒さに耐えるふさふさの冬毛は、ちょっとうらやましいぐらいだ。

 「環境の変化に慣れるまで1か月ぐらいかかりましたが、現在はリラックスしていますね。単独で放牧していて、隣りの放牧地にいるアチャティーという馬と相性が良いみたいです。2頭は馬房も近いんですよ。アチャティーの存在が、グランに安心感を与えているようです。」と、宮本さんは近況を語る。朝は6時前から放牧し、午後4時過ぎに集牧している。

 「人や馬に対して悪さをすることはありませんし、厩舎からの出し入れの時も大人しいです。乗用馬時代にも、よく調教されていたのでしょう。少し人見知りなところはありますが、お利口さんな馬です。」そんな褒め言葉を聞きながらも、グランは食事に夢中だった。

 現役時代は2歳~8歳までタフに58戦を走り抜けた。ご褒美の時間は、たっぷりと注がれる。新緑の季節までは、もう2か月といったところか。宮本さんは、「今年13歳と、まだまだ若いですからね。藤沢さんの望みはもちろん、一昨年亡くなった父サニーブライアンの分まで、長生きして欲しいと思います。」と、優しい眼差し。新しく出会った牧場の皆さんにすっかり心を許したグランの瞳も、同じように優しかった。