ダイワテキサスを訪ねて~にいかっぷホロシリ乗馬クラブ
1998年のオールカマー(G2)、2000年の中山記念(G2)など重賞5勝を挙げたダイワテキサス(ハシモトファーム生産)を訪ねた。2007年に種牡馬を引退し、現在は新冠町節婦のにいかっぷホロシリ乗馬クラブで乗用馬となっている。
「今年で20歳を数えますが、具合の悪いところはなく、健康状態は良好です。年齢を重ねてきたこともありますが、すっかり落ち着いていますね。人懐こい馬で、誰がさわっても平気。小さなお子様も、ご高齢者様もよくふれ合っています。初心者でも安心して乗せられる、頼りになる存在です。」と、紹介してくれたのは、同乗馬クラブ支配人の山畠輝男さん。普段は体験乗馬(初心者)、森・海へのトレッキング(初心者・経験者)で起用される。現場スタッフの呼び名は「テキ」_調教師ではないが、仕事をきっちりこなせる馬とあって、同厩の若い乗用馬にとっては先生的存在だ。
冬のある日、関西からのグループ客が訪れ、その中の女性がテキにまたがった。乗用馬仲間のアブクマポーロ、ライブリマウントらと一緒に森へと入る。深い雪道をのしのしと歩くテキに、女性は安心して手綱を握っている様子。しんとした森の中で、人馬とも大きく息を吸い込み、白い息を吐く。2月、3月のトレッキングコースには鹿や狐の親子が現れることもままあり、この日もコースの50m向こうで子鹿が跳ねていた。驚く女性をよそに、テキは物見することなく、誘導馬のように綺麗に歩く。コースを熟知しており、その脚捌きに迷いはない。観光客のお相手も多いだけに、鞍上の関西弁も聞き慣れているのかもしれない。
「昔はテイエムオペラオー、メイショウドトウ、ステイゴールド…そうそうたる馬たちと戦っていた馬ですからね。相変わらずファンの方は多いです。電話予約の際に、指名もよく受けています。」と、山畠さん。通算成績は53戦11勝、2着9回3着5回。あまり競馬に詳しくない騎乗者に、「6億円以上の賞金を稼いだ馬なんですよ。」とスタッフが伝えると、案の定、驚かれるという。その反応を耳にしながら、テキはほくそ笑んでいるのだろうかと想像してしまう。
「現役バリバリの乗用馬として、今後も一人でも多くのお客様に乗って欲しいです。」北海道の寒空の下、山畠さんは元気を送るように言う。同乗馬クラブのクラブハウスには、牧原由貴子騎手(旧姓)を背にしたダイワテキサス・引退式の写真が飾られてある。今年もアスリート時代を懐かしみながら、全国のファンがテキに会いにくることだろう。蛯名正義、岡部幸雄、北村宏司、後藤浩輝、木幡初広、四位洋文、柴田善臣、武豊、田中勝春、的場均といったG1ジョッキーを乗せた背中は、今年も健在でいる。