馬産地コラム

サイレントディールを訪ねて~ブリーダーズ・スタリオン・ステーション

  • 2013年02月08日
  • サイレントディール
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 現役時代から500キロを超えた大きな馬体に、詰め込みきれないくらいの大きな期待を背負った馬。芝・ダート、中央・地方の重賞に勝ったサイレントディールを、日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションに訪ねた。

 雪で覆われた放牧地に、きれいな栗毛がよく似合う。13歳になったが、薄い皮膚は寒い冬にもかかわらず透明感を失っていない。顔には大きな流星が走り、まるで絵画から抜け出てきたような美しい馬だ。もう間もなく種牡馬生活5年目を迎えるが、無駄肉はなく、軽い足捌きは運動能力の高さを示している。

 「この馬が持っている能力を産駒に伝えることができれば、大きいところを狙えると思っています」とスタリオンスタッフが言葉に力を込めた。

 昨年夏にデビューした初年度産駒は地方競馬を中心に活躍している。広島県の福山競馬場に所属しているメイライトは若駒賞2着、福山2歳優駿3着とトップレベルの活躍をしており、南関東のドリームタイムは大井競馬場で行われたJRA指定競走ゴールドジュニアーで4着。ほか、大井競馬場のデビュー戦で2着したナイキフェイムや、川崎競馬場の新馬戦3着のブルーペンダスなど可能性を感じさせる馬も出ている。

 「今のところはダートというかパワータイプの馬が多いようですが、この馬自身が芝の重賞勝馬ですから、芝が不向きだとは思いません。全姉のトゥザヴィクトリーが5歳秋のエリザベス女王杯(G1)を勝ったように成長力もあると思っています」と期待している。実際、サイレントディール自身も3歳春のシンザン記念(G3)優勝から長くオープン級で活躍し、7歳時に佐賀記念(Jpn3)を勝った。仕上がりの早さと成長力、そしてタフさを兼ね備えていた。

 同スタッフによれば「動くのは好きみたいですね。放牧中も一か所でじっとしていることは少ないように思います」という。そんな話をしているときに、何かの拍子に遠くの放牧地にいるスウェプトオーヴァーボードが走りまわり、それにつられるようにサイレントディールもいななきながら反応した。

 「サンデーサイレンスの直子ですからおっとりした馬ではないのですが、立ち上がったりするわけではなく、普段は周囲に煩わされることなくマイペースの馬なんです。ただ、ふとした時に気持ちが入っちゃうときがある。そんなときは闘争心を表面に出すことがあります」と見学の際の注意を促してくれた。同スタリオンでは種付シーズン以外は見学時間を設けているところも嬉しいところだ。

 もう、間もなく2世代目産駒がデビューを迎えようとしている。初年度産駒は可能性を示してくれた。「大きいところを狙えるような馬が出てくれることを信じています」というスタッフのためにも、2世代目産駒の奮起に期待したい。