馬産地コラム

バゴを訪ねて~JBBA静内種馬場

  • 2012年12月27日
  • 日高にいる唯一の凱旋門賞馬バゴ
    日高にいる唯一の凱旋門賞馬バゴ
  • 素軽い脚捌きを見せる
    素軽い脚捌きを見せる
  • 秋から毎日乗り運動をしている
    秋から毎日乗り運動をしている
  • 2頭目のG1馬誕生を目指す
    2頭目のG1馬誕生を目指す

 欧州競馬の年度表彰「カルティエ賞」。とりわけ、最優秀3歳牡馬は花形部門で、近年の受賞馬にはシーザスターズ、ワークフォース、フランケル、キャメロットと、その年の欧州最強馬との呼び声高い馬たちが並ぶ。数々のフランスG1を制したバゴ(フランス産)もその一頭。現在、馬産地日高にいる唯一の凱旋門賞馬。JBBA静内種馬場で種牡馬生活を送っている。

 「年齢以上に若く、元気を持て余しているぐらいです。だいぶ種馬らしくなってきましたが、活発でやんちゃ。病気をすることもなく、食欲旺盛です。」と、近況を語るのは同種馬場・獣医師の遊佐繁基さん。種付けは上手で、受胎率も上々とのこと。パレードリンクで対面すると、素軽い歩様を披露した。11歳の馬体は充実一途。身のこなしは柔らかく、乗り運動ではかなりのパワーを感じさせる馬だという。

 これまで産駒は4世代がデビューし、菊花賞(G1)を制したビッグウィークをはじめ、桜花賞(G1)2着の実績が光るオウケンサクラ、大井の2歳重賞を制したショウリュウといった活躍馬を送り出している。とりわけ、G1馬ビッグウィークが母の父サンデーサイレンスという血統から、その系統との相性に注目が集めっている。

 「実際にサンデーサイレンス系の繁殖牝馬がよく来ていますね。相性は良いと思います。産駒は距離、芝ダート問わず勝ち上がっていて、あらゆるタイプを出しています。」と、遊佐さん。息子・娘たちの頑張りも事細かにチェックしている。「2歳にも楽しみな馬がデビューしていますよ。」と、笑みを浮かべる。

 今年デビューの2歳世代の中から、中山で新馬勝ちを決めたマンボネフューの評判が良い。2戦目のOP特別では見せ場を作れなかったものの、3戦目の500万特別では、後の2歳G1馬ロゴタイプと0.2秒差の2着。もともとセレクトセール・1歳で2,625万円(税込)という値がついた馬で、来春のクラシックを意識させる好素材として覚えておきたい。

 「2歳世代は少ない生産頭数ながら健闘していますし、来年・再来年デビューの世代は数が揃っていますから、今後まだまだ種牡馬成績を伸ばしていけると思います。父の高い能力を思わせるような大物を送り出していきたいです。」(遊佐さん)

 現役時代、凱旋門賞(G1)でマークした勝ち時計は、91回を数える歴史の中で4番目に早い。欧州系種牡馬に持たれがちな重厚なイメージを覆す、時計勝負に対応できる遺伝子は魅力。200万円を切る種付け料もまた魅力だ。来春_多数の新種牡馬がひしめく種牡馬界にあって、多くの生産者が話題の馬に関心を寄せるだろう。一方で、そんな時こそ、今一度凱旋門賞馬の底力に賭け、バゴに望みを託す生産者の一手が、やおらハマる気がしてならない。流行りの馬たちを横目に、反撃のムードが漂っている。