馬産地コラム

ケイムホームを訪ねて~JBBA静内種馬場

  • 2012年12月27日
  • ケイムホーム
    ケイムホーム
  • 黒光りする好馬体
    黒光りする好馬体
  • 産駒サウンドリアーナが中央重賞V
    産駒サウンドリアーナが中央重賞V
  • 来季は多数の申し込みを受けている
    来季は多数の申し込みを受けている

 米国ダートG1・3勝の実績馬・ケイムホーム(米国産)を訪ねた。2008年よりJBBA静内種馬場で種牡馬生活を開始し、目下、本邦デビュー産駒・2世代の走りに注目が集まっている。

 「健康状態はいたって良好です。もともと毛ヅヤの良い馬ですが、歳を重ねて一層黒光りしてきましたね。心身ともに充実しています。」と、近況を語ってくれたのは、同種馬場獣医師の遊佐繁基さん。カメラを向けるとサッと耳を立てて構えてくれた。賢そうな顔をしている。普段は素直で、物おじしない性格とのお話。種付けシーズン終了後は9月まで休養期間に充て、悠々自適に夏を越した。10月からは毎日約30分、同種馬場職員が乗り運動をし、来季へ向けて体調を整えている。

 現役時代は12戦9勝。G1以外では負けなかった。米国ダートを舞台に活躍し、同世代のライバルにはウォーエンブレム、ヨハネスブルグがいた。2歳時から頭角を現し、ホープフルS(G1)、サンタアニタダービー(G1)、パシフィッククラシックS(G1)を制覇。特筆すべきは幅広い距離適性で、1200m~2000mで重賞勝ちし、スピード・スタミナともに高いポテンシャルを示した。

 本邦導入後1年目は日高管内繋養種牡馬の中ではトップの175頭と交配した。その後もコンスタントに70頭以上の繁殖牝馬を集め、生産者から高い支持を得ている。今年の交配頭数は42頭とやや減少したものの、2世代目産駒のサウンドリアーナがJRA・2歳重賞を制し、来季は早くも70頭近い交配が決定している。

 「サウンドリアーナの重賞制覇を追い風に、申し込みが増えましたね。待望の産駒JRA重賞勝ちで、嬉しく思っています。ケイムホーム自身は頑丈な馬で、受胎率も優秀。今後も多くの繁殖牝馬を迎え入れていきたいです。」と、遊佐さんは声を弾ませる。

 産駒の勝ち上がりを見ていると、短距離・中距離どちらも偏りがない。自身はダートで結果を残したが、その父ゴーンウエストの血統らしく、産駒は芝ダート不問。パワーを要する地方ダートでは、ガルホームが2歳重賞・九州ジュニアグランプリ(佐賀)を8馬身差のぶっちぎり、一方で今秋、サウンドリアーナがJRA芝のファンタジーS(G3)で素晴らしいスピードを発揮し、過去5年の同重賞で最も早い勝ち時計を叩き出した。

 「芝ダート、距離、幅広く選択肢を持てますね。大きすぎず小さすぎず、バランスのとれた体型の産駒が目立っています。仕上がりは比較的早く、市場での評価も引き続き上々です。」と、遊佐さん。100万円前後の手頃な種付け料ながら、過去の市場取引では1,000万円を超える落札馬が複数飛び出し、今年のHBAトレーニングセールでは最高価格馬(2,940万円(税込))を送り出している。

 「2歳世代が堅実に勝ち上がっていますし、今年は昨年以上の種牡馬成績を残しています。サウンドリアーナをはじめ、産駒のこれからが楽しみです。」と、遊佐さんは期待を募らせる。万能の遺伝子はどの頂に手をかけるのか。重賞勝ち馬の飛び出しとともに、いよいよ本領発揮の時を迎えている。