馬産地コラム

ヴィクトワールピサを訪ねて~社台スタリオンステーション

  • 2012年12月20日
  • ヴィクトワールピサ
    ヴィクトワールピサ
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    ヴィクトワールピサ

 競馬最大の魅力はサイクルが短いことだという人がいる。

 現役を引退し、そして競走馬の父としてターフに帰ってくるまで、最短で3年半。まだ現役当時のイメージを残したまま、その仔を応援できるというのは競馬ファンだけが味わえる至福の瞬間だ。

 ちょうど1年前の有馬記念(G1)を最後に引退したヴィクトワールピサは、北海道安平町の社台スタリオンステーションで供用2年目の春を迎えようとしている。頭絡を外され、自由気ままに放牧地をあるくヴィクトワールピサを見ていると、「もう1年か」という思いと「まだ1年か」と複雑な思いが交差する。

 馬主の市川義美さん、管理調教師の角居勝彦調教師も出席した同スタリオンが行う種牡馬展示会で、市川氏はちょっと照れくさそうに「立派な馬ですので、よろしくお願いします」と言葉少なにあいさつし、角居調教師は「世界に通用したパワーとスピードの持ち主で、今度は種牡馬として世界の馬と戦わなければならない立場です。ぜひ、世界に通用する馬を作っていただきたい」とアピールした。

 事務局の徳武英介さんからは「サンデーサイレンス系の最先端種牡馬です」と紹介された。その言葉は1年経った今でも衰えることなく、阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)では近親のローブティサージュが優勝。勢いに衰えがないことを証明している。

 「もう、まもなく初年度産駒が生まれますがどんな子が生まれてくれるか、とても楽しみです」と社台スタリオンステーションでも期待している。初年度の配合数は150頭。数だけではなく、98年のオークス馬エリモエクセルや94年の最優秀2歳牝馬ヤマニンパラダイス、2009年のエリザベス女王杯(G1)優勝クィーンスプマンテはじめファレノプシスの母キャットクイルやハットトリックの母トリッキーコード、キャプテントゥーレの母エアトゥーレなどの名も見える。そんな中でもさん然と輝くのは英国のサンチャリオットS(G1)を3連覇したサプレザか。いずれにしてもワクワクするようなラインナップであることは間違いない。

 「力の要る馬場になった皐月賞(G1)で見せたハイレベルな瞬発力に加えて、有馬記念(G1)でブエナビスタの追い込みを退けたスタミナと底力。何よりもドバイの地で見せた偉業。どれをとっても種牡馬として魅力にあふれていると思います。それに兄のアサクサデンエンやスウィフトカレントが高齢になってから強くなったように、この馬も底を見せていない面があると考えています。いずれにしても楽しみです」。言葉を弾ませている。