メジロライアンを訪ねて~レイクヴィラファーム
レイクヴィラファームで功労馬生活を送るメジロライアンを訪ねた。種牡馬生活を退いてから5年が経つ。年が明けると26歳を迎える。アイネスフウジン、アグネスフローラ、 イクノディクタス、ダイイチルビー、ダイタクヘリオス、トウケイニセイ、ハクタイセイ、 プレクラスニー、レッツゴーターキン…女優の長澤まさみさんも同い年。役者が揃っている。
「基本的には昼も夜も、放牧時間をたっぷりとって過ごしています。よく動いている分でしょうか、食欲は十分にありますね。」と、近況を紹介するのは同牧場の岩崎義久さん。頭の良い馬で、人をよく見るという。ライアンに挨拶する前に、聞いておくべきだったか。牧場へ会いに行くと、馬体を磨いて待ってくれていた。毛並みがきれいだ。取材対応には慣れた様子で、格好良くポーズを決めてくれる。アスファルトを闊歩する音も力強い。
今年も夏の函館競馬場でお披露目を行った。“函館出張”は、洞爺住まいのメジロライアンならではのファンサービスだ。年齢を感じさせない笑顔と元気を振りまく裏側で、岩崎さんは全力でサポートに努めた。
「毎回のことですが、体調に十分チェックして、慎重に取り組みました。今年も大勢の方にご覧いただき、本当に嬉しく思いました。」
その温かい声援は、ライアンの耳にも、日頃支える牧場の皆さんの耳にも、函館の潮風に乗って確かに届けられている。
種牡馬生活は15年に及んだ。755頭の息子・娘たちが競馬場に向かい、445頭が勝ち馬となっている。代表産駒はと問われれば、牡のメジロブライト、牝のメジロドーベルとなるだろうか。ともにG1を制し、その実績は父の看板を一層輝かせた。最近では母の父として競馬新聞に名を示し、孫世代の活躍も目立ってきている。昨年の朝日杯FS(G1)2着のマイネルロブストをはじめ、JRA・オープンクラスまで出世したアウトクラトール、2歳G1(Jpn1)に駒を進めたエイシンパンサー、ヴァイタルシーズらの名が挙がる。現役時代、しのぎを削った同い年・メジロマックイーンは、母の父としてオルフェーヴル、ゴールドシップといったG1馬を出しただけに、ライアンも負けていられない。
牧場の若い女性スタッフと一緒に歩くライアンは、どこかご機嫌な顔をしている。短く刈り揃えたたてがみヘアーは、現役時代を知るファンに懐かしい。
「これからもストレスを与えないように、しっかり体調管理していきたい。幸せな余生を送らせたいですね。」ふんどしを締め直すように話す、岩崎さんの言葉をメモにとる。
功労馬として一緒に過ごした同い年、メジロパーマーは今年4月に天国へ旅立ってしまった。生きていれば、一緒に取材を受けてもらっていただろう。昨年秋の「競走馬のふるさと案内所監修・北海道馬産地ガイドツアー」では、パーマー・ライアンが揃ってツアー参加者をもてなしていた。話し相手の一頭は空の上だが、牧場には自慢の娘が住む。厩舎は少し離れているが、同じ洞爺の空の下だ。家族がそばにいることを知ってか知らずか、ライアンは安堵している。大黒柱のオーラを携えながら。