馬産地コラム

ヴァーミリアンを訪ねて~社台スタリオンステーション

  • 2012年11月30日
  • ヴァーミリアン
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    ヴァーミリアン

 「男は、タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」といったのは作家のレイモンド・チャンドラーだったが「強く、タフな馬」。それがヴァーミリアンという馬だ。

 息の長い末脚を武器にJBCクラシック(Jpn1)3連覇。ジャパンカップダート(G1)は圧巻のレコード勝ちをおさめ、フェブラリーS(G1)は積極的なレース運びでブルーコンコルド以下を封じ込めた。そして東京大賞典(Jpn1)、帝王賞(Jpn1)では公営の雄フリオーソの野望を打ち砕いた。晩年はやや休みがちになってきたが、2歳から8歳の秋までタフに走り続けた。とくに、5歳春の川崎記念優勝以後は引退まで19戦連続G1レースに出走。中央・地方、そして世界にまで視野を広げて砂の大レースを求め、そして勝利を積み重ねてきた。G1(Jpn含む)レース9勝は、いまだどの馬もなしえていない金字塔だ。

 かつて、ノーザンファームの中尾義信さんは「ローテーションが整備されたこともプラス材料ですが、高齢まで競走意欲が衰えない。走ることが好きな馬」と表現し、社台スタリオンステーションの徳武英介さんは「時代が求めた馬」と言った。

 そんなヴァーミリアンは現在、北海道安平町の社台スタリオンステーションで3年目のシーズンを迎えようとしている。10歳という年齢の割には落ち着いた雰囲気を醸し出しているのは豊富な競走キャリアゆえだろうか。

 「競走馬として長く活躍し、そしていきなりまったく違う環境で種牡馬生活をスタートさせた1年目と異なり、今年はしっかりと準備の時間がありましたので馬自身が自信をもって臨めたシーズンだったと思います」というのは同スタリオンの徳武英介さんだ。と言っても初年度は216頭、2年目シーズンも206頭の繁殖牝馬に配合を行っている。

 初年度産駒には、オレハマッテルゼの半妹やルイジアナピットの半妹ペパーミントグラスが生んだ牝馬がいて、2012年シーズンは帝王賞(G1)や東京大賞典(G1)勝馬のファストフレンドやウインターS(G3)勝馬チェリーコウマン、阪神大賞典(G2)やダイヤモンドS(Jpn3)など長距離重賞で活躍中のトウカイトリックの母ズーナクアなど期待の大きさを表す牝馬が配合を行っている。

 「産駒は、ヴァーミリアンの産駒らしくしっかりした体型の馬が多いと聞いています。ダートで活躍しましたが、ヴァーミリアン自身は芝の重賞勝馬でもありますから、いわゆるダート専用の種牡馬ではないと思っています。種牡馬としても息の長い活躍をして欲しいと願っています」と期待されている。